イバス氏が議員辞職 大統領次男の民主党幹事長 国会出席を偽る 17日に党大会
アナス・ウルバニングルム党首の処遇をめぐり内部対立が深刻化する民主党は、17日に予定されている全国党大会を前に、大会内で新党首を選出すべきかどうかの議論が沸騰している。党幹部の汚職疑惑で失墜した支持を取り戻すべく立て直しを図る中、ユドヨノ大統領の次男エディ・バスコロ(通称イバス)同党幹事長は14日、国会本会議への出席を偽ったとの追及を受け、国会議員の辞職を表明した。大統領の支持母体である民主党の混迷が続いている。
イバス幹事長の議員辞任は、英字紙ジャカルタ・ポストが13日付で、イバス氏が国会本会議で出席のための指紋認証を行いながらも、会議自体には出席しなかったと報じたのがきっかけ。地元メディアでイバス氏批判が沸騰。同氏は14日、「指紋認証を行った後に急用ができた。3日後の党大会の準備を進めなくてはならなかった」と釈明した上で、「党務に専念する」として議員を辞職する意向を示した。
ジャカルタ・ポスト紙の報道にはイバス氏の新党首の芽を摘む意図があったとの観測も上がった。父親のユドヨノ大統領は14日、「前日の夜、イバスから相談を受け、(大統領夫人の)アニと(長男の)アグスとともに話し合った」と明らかにし、「容易な決断ではなかったが、イバスが議員を辞職するという意向に家族全員が同意するという結論に至った」と説明。イバス氏の虚偽の出席報告について、「父親として、(イバス氏が議員を辞職することで)責任を取ったことについて誇りに思うが、会議出席の問題については謝罪したい」と述べた。一方、「私と家族にとってつらい時期は2004年から続いているが、最近特にわれわれへの攻撃や誹謗(ひぼう)中傷が激しくなっている」として、政敵による政治的な動きが活発化していることに苦言を呈した。
イバス氏は弱冠32歳の幹事長。豪州の大学を卒業後、シンガポールの南洋理工大学で修士を取得。07年12月民主党に入党した。09年に国会議員に初当選し、10年に幹事長就任。極めて早い出世を遂げる「民主党のプリンス」。11年11月にハッタ・ラジャサ経済担当調整相の長女と結婚した。
■党大会で新党首選出も
党大会開催は8日の党最高意志決定機関の会合で決定。党の支持率はアナス党首ら幹部の汚職疑惑などの影響を受け、直近の世論調査で8%台まで落ちた。アナス氏の退陣要求派は党大会で臨時会合を開き、新党首選を行うべきと主張。15年までの任期があるアナス氏の早期更迭を図りたい考えだ。
党内ではアナス党首の後任をめぐる議論が百出している。ハヨノ・イスマン最高顧問会議委員は「容疑者断定で党首職を失う」と発言。ほかの幹部も公に退陣を迫った。後任に名前が挙がったのは、イバス幹事長、大統領の義弟プラモノ・エディ・ウィボウォ陸軍参謀長の大統領の親族2人と、スカルウォ東ジャワ州知事。民族覚醒党(PKB)元幹部のマーフッド憲法裁判所長官も浮上したが、党幹部は党外からの登用を否定している。
一方で、民主党最高顧問会議委員のアミル・シャムスディン法務人権相は「党大会で党首選出はしない」と強調。党大会の主要行事は地方党員による「一致団結の誓約書」への署名とした。渦中のアナス党首は14日、一致団結の誓約書に署名。「私はまだ党首。ユドヨノ大統領もそう言った」として、党首を続ける意欲を示した。
だが、アナス氏の運命はKPKの捜査次第という状況になっている。コラン・テンポ紙によると、アナス氏が所有するミニバンが、国営ゼネコンのアディ・カルヤ社からの贈賄の証拠として浮上。一方、アドナン・パンドゥ副委員長は「ミニバンは重要な証拠だが、10億ルピアを下回り、(損害額10億ルピア以上の大型汚職事件に特化した)KPKレベルの話ではない」と述べ、容疑者断定に慎重な姿勢を見せた。一方、KPKから漏えいしたアナス党首の汚職捜査を指示する内部文書には、委員長と副委員長2人の計3人が署名したが、他の委員の署名がなかったと報じられ、幹部の間に亀裂が走っているとの見方も出ている。(吉田拓史)