モノづくりセミナー 「良い出会い生む商いを」 細辻・永楽屋社長が講演 PPIJなど共催
高級手ぬぐいの製造・販売を手がける「永楽屋」(本社・京都市)の細辻伊兵衛社長(48)は7日、インドネシア日本友好協会(PPIJ)などがジャカルタで共催した「第3回モノづくりセミナー」で講演した。約400年の歴史を持つ老舗の伝統を基に、時代の変化に応じて柔軟な事業展開を実践していく必要性を説き、「ただ商品を作って売るというだけでなく、お店に来た人との良い出会いを生むような商いをしていきたい」と語った。
永楽屋は1615年に京都で創業した。戦国大名織田信長の御用商人を務めた細辻家は、江戸時代に呉服商として事業を開始。明治以降はタオルなどに主力商品を移しながら、14代目の細辻社長まで店を守り続けてきた。
現在は高級手ぬぐいのほか、帆布かばん、柔らかい素材を使ったガーゼ手ぬぐい、着物の製造・販売も手がける。現在、京都市の本店のほか東京など日本全国に16店舗を構える。
細辻社長は1964年生まれ。元々自動車エンジニアとして働いていたが、アパレル業界に転身。細辻家の婿養子になった1992年に永楽屋に入社し、義父の先代社長が亡くなった99年、社長に就任した。
就任時、同社は債務超過にあり、自宅を売却して事業資金を工面しなければならないほどの業績不振だったという。細辻社長は打開策として「京都という街」と「老舗」というブランドを生かし、明治・大正時代の同社手ぬぐいの復刻版の製造を考案。全国各地の染色技術の高い業者に足を運び、復刻版高級手ぬぐいを開発した。小売事業にも進出し、売上を就任前の10倍の約10億円まで伸ばすなど経営再建に成功した。
モノづくりセミナーはPPIJと元日本留学生協会(プルサダ)、日本貿易振興機構(ジェトロ)が松下ゴーベル財団などと協力して開催。インドネシア人を中心に、約150人が参加した。セミナーでは、参加者を交えて風呂敷かばん作りを実演し、好評を博していた。(赤井俊文、写真も)