100万〜120万台に 13年自動車市場見通し 優遇税制がカギ 通貨安や金融規制 リスク要因も浮上 各社幹部に聞く
2012年の自動車販売は前年25%増の111万台と過去最高を記録した。中長期的には今後も右肩上がりの拡大が期待されるが、足元を見ると、ルピア安や金融規制、燃料値上げなどが販売に影響を及ぼす懸念も上がっている。昨年にも発布される予定だった優遇税制「低価格グリーン・カー(LCGC)プログラム」の実施時期も依然定まらない。今年の自動車市場はどうなるのか。昨年の販売実績で全体市場の約88%を占める上位6社の現地法人幹部に話を聞いた。(田村慎也)
各社幹部が予測する今年の販売台数は100万〜120万台のレンジに収まる。場合によっては、前年割れをする可能性もあるとの意見も出ている。トヨタの現地販売法人トヨタ・アストラ・モーター(TAM)社の今井栄幸副社長は「市場が伸びる力と、LCGCの状況にもよるが100万台は超えるとみている。昨年並みか昨年プラスアルファ程度。1、2月の様子をみたい」と語る。LCGCのプログラムの導入時期が販売を大きく左右するとみられる。
「ハッチバック・タイプが市場の10%程度だが、LCGCで15〜20%を占めるようになる」(今井副社長)、「8〜10万台の市場が創出されるとみている」(ホンダ・プロスペクト・モーター=HPM=社の内田知樹社長)との見通しが上がるLCGC。日産インドネシア社の泉田金太郎社長は「2015年に150万台市場になると見込んだ場合、30万台くらいがLCGCで創出されるだろう」として、14年に予定するダットサン・ブランドのLCGC対応車に期待をかける。同プログラムでの発売を念頭に置くトヨタ「アギア」、ダイハツ「アイラ」を生産する現地法人アストラ・ダイハツ・モーター(ADM)社の大瀧一郎執行役員も「手ごたえがあり、かなり期待している」と話した。
■シャリア金融の影響は
LCGCは、シティカー「ブリオ」(排気量1300cc)を規定に応じた形で生産するというホンダは、シャリア金融のローン購入規制が販売のマイナス要因になる可能性を懸念する。「LCGCの購入層と、シャリア金融利用層が重なる可能性がある。ブリオの販売にも影響を及ぼしかねない」(内田HPM社長)。
一方、規制の影響は軽微との意見も。三菱ブランドの自動車を販売するクラマ・ユダ・ティガ・ベルリアン・モーター(KTB)社の岡本大資・販売担当取締役は「シャリア金融も懸念されるが、金融会社はたくさんあり、長期ローンの新商品も出てきている」と指摘。大瀧ADM執行役員は「シャリア金融規制の影響はそれほど大きくないとみているが、ガソリン価格の値上がりやルピア安が今年の市場の懸念事項」と各社が独自の分析を展開している。
■不安定要因挙がるも
ルピア安で輸入部品の調達コストが上昇した結果、今年に入り各社が販売価格を軒並み1、2%引き上げた。最低賃金の大幅引き上げは、各社が、販売価格に反映されていないとしているが、「最低賃金上昇などで経営コストが上がると、法人需要も落ち込む可能性がある。石炭、パームオイルなどの価格次第では、商用車販売にも影響が出る」(今井TAM副社長)との指摘も上がる。
「ルピアがこれ以上安くなれば、販売価格のさらなる値上げを検討せざるを得ない。鉄鋼のダンピング関税が検討されていることもリスクになり得る」(内田HPM社長)、「政治的状況と、マクロ経済、ルピア安などリスクも出てきている」(泉田NMI社長)と今年の販売には不安定要因もつきまとっているが、中期的な市場拡大は揺るぎない。
「ゆるやかなルピア安が続く限り、自動車市場の勢いを打ち消すほどのものでもないと思う」(スズキ・インドモービル・セールス=SIS=社の内海章社長)、「成長の勢いが一時的に弱まる可能性はあるが、基本的には右上がり」(今井TAM副社長)と前向きな見方が支配的だ。