「21世紀の繁栄を共に」 福田元首相が呼び掛け イノベーション会議閉幕
日本インドネシア・イノベーション会議(バンドン工科大=ITB=主催)最終日の2日、西ジャワ州バンドンの同大でブディオノ副大統領と日本インドネシア協会会長の福田康夫元首相(前自民党衆議院議員)が講演した。「資源を持たない日本が将来にわたって経済力を維持し、世界の発展に貢献していくためには、イノベーションを継続していくことが宿命付けられている」との認識を示した福田氏は「両国が協力することで、21世紀の繁栄を共に切り開いていきたい」と呼び掛けた。会議は、来年の国交樹立55周年を控え、日本が以前のようなアジアで唯一の経済大国ではなくなり、インドネシアが著しい発展を見せるなど取り巻く環境が変わる中で、イノベーション分野を中心に協力の「第2の波」を構築していこうとする「バンドン・イノベーション声明」を発表して閉幕した。(西ジャワ州バンドンで関口潤、写真も)
福田氏は、限られた資源の中での人口の爆発的な増加を背景に、「イノベーションの進展は21世紀の世界にとって死活的に重要な問題」と強調。
その上で「マイクロソフトのビル・ゲイツやアップルのスティーブ・ジョブズのような神童が画期的なイノベーションを創出したように思われがちだが、彼らがビジネスとして成功したのは、ガレージでパソコンを組み立てていた無名の時に、支援する法体制や税体系、アメリカの自由でダイナミックな社会があったからだ」「日本では民主党政権下で政府予算の無駄を削除するために『仕分け』が行われ、某議員が『スーパーコンピューターの世界でどうして日本が世界一にならないといけないの』と発言して有名になったが、日本国内の一流の科学技術者たちがこぞってこの発言に反対したのは当然」と述べ、イノベーションの興隆のために必要な息の長い戦略を政治が正しく理解し、国民に丁寧に説明していくことが重要と力説した。
中小企業の裾野の広さもイノベーションをビジネスにつなげるために不可欠と説明。「日本企業の積極的なインドネシアへの投資、進出が続いているが、大企業だけでなく中小企業に広がることを期待する。そのためにインドネシアは社会インフラや法制度、税制度の整備を進めて、外国の中小企業も呼び込む努力を一層してもらいたい」と呼び掛けた。
「日本は第2次世界大戦後、経済的には一応成功を遂げたが、21世紀に入って経済、社会、政治面でさまざまなチャレンジに直面している。それを乗り越えるには日本人が自らを新しくする、すなわちイノベートすることが必要」と述べ、「マリ・キタ・マジュ・ブルサマ」(共に前へ進もう)とインドネシア語で講演を締めくくった。
■投資環境改善に努力
ブディオノ副大統領は「インドネシアは、原材料や安い労働力に頼らない発展段階に入りつつある。知識、イノベーション、創造性を経済成長の源としなければならない」と強調。
「日本は技術開発とイノベーションの分野で主導的な国の一つであると認識されている」と評価するとともに、昨年、日本が最大の輸出先だったことなどを挙げ、互いに利益をもたらすイノベーション分野での連携へ向けた土台がすでにできているとの認識を示した。
日本との一層の技術協力や日本企業からの投資促進へ向けては「われわれは投資環境の改善とインフラ開発を続けていかなければいけないことをはっきりと理解している」と語った。
ブディオノ氏と福田氏は講演前、会場で約25分間会談。福田氏は、今回は日本インドネシア協会の主要会員となっている企業幹部数十人と共に訪問していることを紹介し、「インドネシアが近年、世界でもほかに例を見ないほど安定的に経済成長を成し遂げている」と敬意を表した。
ブディオノ氏は、日本が「常に長い目でインドネシアとの協力を考えている」と感謝の意を述べた。
福田氏は3日、日本インドネシア協会の訪問団として、ユドヨノ大統領やハッタ・ラジャサ経済担当調整相、マルティ・ナタレガワ外相と会談。4日にジョコ・スヤント政治・法務・治安担当調整相、ヒダヤット工業相らと会談し、同日夜に帰国する。