過激化する労使対立 「同じ目線で地道な努力を」 ベテラン経営者ら提言 ジェトロSMEJセミナー

 日本貿易振興機構(ジェトロ)ジャカルタ事務所は 28日、中小企業(SMEJ)連合会との共催で、「体験から学ぶ労務管理」をテーマに「ジェトロ・SMEJセミナー」を開いた。最低賃金や派遣労働をめぐって労働組合の活動が一部で過激化しており、日系企業も対応に苦慮する中、パネルディスカッションでは「日頃からコミュニケーションを密に取り、信頼関係を構築していることが重要」との認識で一致した。
 フマキラー・インドネシア社社長の山下修作さん、S―IKインドネシア社プレジデント・コミッショナーの冨谷時義さん、MM2100を運営管理するメガロポリス・マヌンガル・インダストリアル・ディベロップメント(MMID)社社長の倉永昌英さん、厚生労働省から出向している在インドネシア日本大使館一等書記官の牧宣彰さんの4人がパネリストを務めた。司会はJACインドネシアの上田ぬ美子さん。

■特効薬はない 常に現場主義

 2003年にフマキラーに移る前、ユニチャームのインドネシア事業立ち上げに携わった山下さん。1998年の工場立ち上げの際に女性社員の目が輝いていたのを見て、「この人たちのためにも成功させよう」と思ったのが現在に至る原点だ。
 ユニチャームの従業員とは今でも家族ぐるみの付き合いが続いており、「ベースに愛情があれば、厳しく指導しても分かってくれる」と山下さん。労使交渉については「特効薬はない。日頃の経営者としての取り組みが重要」と強調。利益などの数字をできる限りオープンにし、「会社が苦しいときは我慢してもらう」という姿勢で臨んでいるという。
 10年以上の駐在歴になる冨谷さんは「日本人が奥の部屋で鎮座していてはいけない」と述べ、常に現場へ赴いて自ら実践することの重要性を指摘。
 「労務の基本はコミュニケーション」とも述べ、50歳を過ぎてからインドネシア語の習得に取り組み、社員と信頼関係を築いてきたと紹介。労働組合は上部団体が活動を主導することがあるが、組合側との「会社は裏切らないという信頼関係」が必要との認識を示した。

■風通しを良く 連絡を早めに

 MM2100内でも過激な組合活動が展開された今年。1998年のスハルト政権退陣時にも駐在していた倉永さんは「満足がいくまで要求を続ける様子は、98年前後と似ている」と話す。
 「軟禁などデモが過激化した場合は、対処が難しくなる」といい、そのような状況に至る前に「同じ目線で地道な努力を」と強調する。
 中国などでの駐在経験を持つ倉永さんは「『日本では』を連発していてはだめ。ここは日本ではない。それに『あいつら』と陰で呼んでいれば、一緒に仕事をしているときに態度に表れる。あくまで『他国で仕事をさせてもらっている』という意識を持っていなければならない」と訴えた。
 牧さんは、労使の争いが多発し、多くの企業が大使館に相談に来ているが、「コミュニケーションの不足がトラブルの要因となっていることが多い。誤解に基づく対立もある」と話す。人事労務を完全にインドネシア人スタッフに任せている企業もあったといい、「風通しを良くする必要がある」と強調。労使交渉が長引いた場合も「あきらめず交渉を続ける姿勢が重要」と語った。
 労使対立で組合側が過激な行動を取った場合、夜に連絡を受けると警察への出動要請が難しくなることから、過激化し始めた日中のうちに連絡をしてほしいと呼び掛けた。(関口潤、写真も)

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