【火焔樹】 ジョコウィ氏いざ首都へ
「ジャカルタに乗り込むなんて考えていなかった。ソロ市長の任期を終えたら、また家具屋に戻ろうと思っていたから」
ジャカルタ特別州知事選当選直後、中部ジャワ州ソロの市長公邸でジョコ・ウィドド氏に会った。愛称「ジョコウィ」の名前が首都の市民レベルで取り沙汰されるようになってから、わずか半年。選挙戦は「ソロでやってきたことをジャカルタでやるだけ」とマイペースで戦った。「ソロではくつろいで見えますね」と言うと、「なあに、ジャカルタでもすぐ慣れるよ」。
就任から1カ月が経ち、公約を実行する時が来た。カンプン(下町)など現場を視察し、その場で関係者の声を聞きながら指示を出していくスタイルは「ソロでやってきたこと」。これまで最もソロ市民の共感を得たのは、市街地から郊外の市場へのカキリマ(露天商)移転計画だった。
インタビュー後、カキリマが入居したクリティカン市場を訪れた。ジョコウィ市長の何が評価されているのか。市場はソロ市街地から車で20分以上かかる。こぢんまりとした古都では町外れ。目の前には田んぼが広がる。
「ジョコウィ市長は移転させて問題解決というのではない。新しい市場の宣伝を続け、知事選前にも当選後もあいさつに来てくれた」。元カキリマたちは異口同音。今では市民の間で、車やオートバイの部品やアクセサリーなどを探すなら、クリティカン市場へと定着した。
ジョコウィ新知事の斬新なスタイルの核にあるのは一貫性だ。慎重だが始めたら猛スピード。事業後のケアも欠かさない。ソロで示した実行力が、大都市ジャカルタで試されている。(配島克彦、写真も)