リサイクル根付かせたい 鹿児島県大崎町が支援 ごみ問題に悩むデポックで

 最終処分場のごみの量が限界点を超すなど、ごみ問題に悩む西ジャワ州デポック市を支援するため、ごみリサイクル率全国1位の鹿児島県大崎町が、国際協力機構(JICA)の「草の根技術協力」を通じ、徹底した分別でごみの絶対量を減らすリサイクルを根付かせようと奮闘している。町は9日、デポック市役所と協議し、官民の連動が不可欠と指摘。一部の市民が始めた分別を、行政が一緒になって進めていくことで市全体の動きにつなげる狙いだ。(上松亮介)
 
 「行政が責任を持って主導しなければならない」―。9日の会議で、大崎町役場企画調整課の徳禮(とくれい)勝矢課長が集まった郡長や区長に指摘した。同町は1998年、それまで使っていた埋立地が2003年には満杯になるとの危機感から、ごみ分別を徹底。06年から5年連続1位のリサイクル率を達成してきた。
 現在年率10%で人口が増加するデポック市では、ごみ最終処理場が昨年の時点で受容範囲を超え、不法投棄も横行する。中間ごみ保管場がなければ、分別方法も規定されておらず、ごみ問題が深刻化していた。
 一方で、主婦を中心とした一部の市民によるごみを減らそうという動きが始まっていた。業者に売るごみを自主的に集めるために立ち上げられた「ごみ銀行」だ。
 生ごみに異物は入ってはいけないし、プラスチックごみはきちんと洗わなければならない。業者に買ってもらえる「質の高いごみ」を市民が集めるには、行政の周知活動が不可欠だ。町は10月、同市の関係者や主婦を招き、市民の指導員として研修。参加した西ジャワ州地域振興局のエティ・スルヤハティ局長は「もうのんびりしてられない。行政と市民が一体にならなければいけない」と話す。
 デポック市は9日、ごみ銀行を正式に支援する方針を表明。8月時点で市内10カ所だった収集拠点は現在50カ所になった。市は将来的に350カ所まで増やす方針を示し、来月29日に分別普及率を競うコンテストを市役所内で開くと明らかにした。
 「ようやく入り口に立てた」(徳禮課長)市に、行政主導のリサイクルは定着するか。大崎町役場関係者は来年2月にも現地を訪れ、引き続き支援していく。

■地域の結束に期待

 「地元のおばちゃん連中が頑張ってくれる」―。9日の会議に出席した郡長らが漏らした。行政関係者の意識がまだまだ低い一方、ごみ銀行など市民の活動は動き出している。JICAのデシー・エンダ・ウランサリ・プログラム・オフィサーは「地域社会の結束はインドネシアならではの強み」と指摘する。
 大崎町は8月、デポック市内のモデル地域計5カ所で主婦を中心とした市民に分別の仕方を紹介。ごみの中で一番重量がある生ごみは家畜のえさや肥料になるし、一番かさ張るプラスチックごみは燃料になる。草の根技術協力を支援する鹿児島大の小原幸三教授(理工学)は発想転換の重要性を説き、「市民の間に『ごみを拾うのはいいこと』という意識が広がれば、あとは行政が持続していくシステム作りを頑張るだけ」と期待する。

■一つの「気付き」

 大崎町とデポック市の草の根技術協力は、一つの「気付き」から始まった。インドネシア大学(UI)内の池への不法投棄。鹿児島大と大学間関係があったUIの教授を兼任する小原教授が09年、UI関係者から聞きつけた。
 鹿児島出身の小原教授は「大崎の技術を世界に伝えたい」と意気込んだ。その思いはUI関係者を通じて、デポック市に伝わった。深刻なごみ問題に悩んでいた同市の市長、大崎町の町長が互いに訪問するなど交流が始まり、協力に発展した。

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