内在力で「相互復興」 東松島、アチェと連携 津波被害の両市 持続的な発展のモデルに

 東日本大震災で甚大な被害を受けた宮城県東松島市は2004年のスマトラ沖地震・津波の被災地アチェ州の州都バンダアチェ市との協力を深めることなどを目的に、大沼雄吉副市長を団長とする使節団を11日から16日までインドネシアに派遣している。同市は「復旧にとどまらない復興」を掲げ、地域が従来から持つ力を生かした持続的な発展モデルを打ち立てようとしている。豊富な資源を有しつつも、復興期に急激に入り込んだ外国資本の影響でひずみも生じているアチェとこれまでの経験と知恵を共有し、「相互復興」を目指したい考えだ。(関口潤、写真も)

 使節団は国際協力機構(JICA)東北支部との合同派遣。アチェ・ニアス復興再建庁(BRR)のクントロ・マンクスブロト元長官(現開発管理調整官)が昨年5月、JICAの紹介で東松島市を訪れたことから今後の協力の形が模索されていた。
 同市はJICA東北を通じて、バンダアチェ市から技術研修生を来年初めにも受け入れる。研修生は市職員や大学関係者が候補となっており、アチェの復興経験を東松島市へ伝えるほか、同市の取り組みをアチェの今後の開発計画に役立てることを狙う。
 使節団は12日、ジャカルタでクントロ氏と面会。クントロ氏は「ただ以前と同じものをつくるのではなく、より先進的なものをつくろうとする試みは、世界の将来にとっても有益なもの。アチェでは復興時に同様の試みはできなかったが、今後学ぶべき点は学んでいきたい」と語った。
 13日からはアチェを訪問。バンダアチェ市関係者との意見交換や研修生候補者と面談をするほか、津波博物館など観光施設、東松島市でも課題となっている高台移転を実施した地域、資源を生かした形での発展を模索する農水産業の現場などを視察する。

■「地域の資源を生かす」 浸水被害最大の東松島
 津波の浸水地域が市街地の65%と全国の被災市町村の中で最大だった同市は、農林水産業の副産物などを活用したバイオマス発電を軸としたエネルギー自給などを柱とする施策をまとめ、その実行部隊として今年10月には一般社団法人の東松島みらいとし機構(HOPE)を発足させるなど、矢継ぎ早に「復興」へ向けた取り組みを打ち出してきた。
 キーワードとしているのは内発的発展。「交付金など外からの資金は永久には来ない。地域にある尽きない資源を使えば永続的に発展することができる」とHOPEの佐藤伸寿事務局長。「資源が少ないうちでできれば、世界のどこでも通用する。豊富な資源があるアチェならなおさらだ」と語る。
 「精神的にも肉体的にも非常に厳しかったが、それをはねのけて進んできた。亡くなった1094人のためにも、もっと素晴らしい町に、住民がもっと住みやすい町にしてきたい」。先進的な取り組みを支える動機について大沼副市長は力を込めて語った。

■「外に頼らない発展を」 JICAが新たな試み
 各国で災害後の復興に協力してきたJICAにとっても、被災地とこれまでの支援地域の協力を推進することは新しい試みだ。
 アチェと東松島市のつなぎ役となっているのは2005年から08年までJICAジャカルタ事務所でアチェの復興支援事業に携わり、現在はJICA東北で震災復興を担当する永見光三さん。永見さんは、アチェで急激な近代化とともにごみ山とごみ収集で生活する人々が現れていることなどを例に、「アチェは外国の支援で借り物の服を着てきた。援助が徐々に少なくなる中で弊害が出てきている」と緊急支援から復興期まで支援してきたJICA職員として自戒の念を込めて語る。
 一方でアチェには結び付きの強いコミュニティが根強く残っている。「最初から(援助に頼らない発展を)見据えてやってきた」東松島市の取り組みは、アチェがコミュニティに内在する力を発揮して発展へ向かう参考になると考えている。永見さんは東松島とアチェの協力について「援助の方法論自体を見直す良いステージ」と語った。

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