域内米備蓄協定に署名 食料安保で協力拡大へ 日中韓ASEAN農相会合 日本製食品の安全性強調 鹿野農相、放射能汚染で
東南アジア諸国連合(ASEAN)は七日、中央ジャカルタのホテル・スルタンで日中韓(プラス3)とASEAN加盟十カ国の農林相会合を開催した。日本からは鹿野道彦農林水産相が出席。食料安全保障が焦点になった会合で各国農相は、大規模災害などへの対処を目的にしたASEANプラス3共同米備蓄(APTERR)協定に署名した。食料価格の急激な変動が世界的な課題となる中、地域協力を一層推進していくことを確認した。鹿野農相は福島第一原発の放射能漏れ事故を受けて各国が輸入に規制を掛ける中、日本製食品の安全性を各国農相に対してあらためて強調した。(関口潤)
APTERRは日本とタイが主導し、二〇〇四年から試験事業を開始。今回の署名で恒久的な事業となり、各国で批准後、正式に開始される。
各国が緊急時に拠出できる備蓄米の量を事前に申告。日本が二十五万トン、中国が三十万トン、韓国が十五万トン、ASEAN各国が合計で計八・七万トンで、総計七八・七万トン。インドネシアは二万五千トンを申告する方針を示している。
タイ・バンコクに事務局を設置予定で、基金には日中韓がそれぞれ百万ドル、ASEAN各国が計百万ドル、総額四百万ドル規模を五年間で拠出する。
鹿野農相は「食料安保が確立されることはアジア地域の安定にもつながる。(APTERRの)署名がなされて新しいスタートが切れたのは、地域の食料安保確立の一歩となる」と評価した。
■イ、協力体制充実訴える
閉会式にはインドネシアからブディオノ副大統領、議長のススウォノ農相、ファデル・ムハンマド海洋水産相、マルティ・ナタレガワ外相、シャリフディン・ハサン協同組合・中小企業担当国務相が出席。
ブディオノ副大統領は演説で「国連によると今月にも世界で七十億人目の赤ちゃんが生まれる」と述べ、急激な人口の増加によって食料問題が喫緊の課題になっていると指摘した上で、「ASEANと日中韓の域内の人口は二十一億人以上。(八日に初めてASEANとの農相会合を開く)インドを含めれば三十三億人、世界全体の四七%に及ぶ」と述べ、地域の協力が世界全体の食料安保問題にも寄与するとの認識を表明。
APTERRに関しては「コメ以外の必需品での協力の可能性を探ることを求める」「われわれは備蓄を緊急時のためだけに限定せず、食料価格の変動と食料需要の急増に対して脆弱な国を支援するために利用すべきだ」と述べ、食料安保を支える協力体制の一層の充実を強く訴えた。
会合後に発表された共同プレス声明には「APTERRをコメ以外に拡大する可能性に期待するとしたことを歓迎」「食料安保イニシアティブを見直し、強化すべき」との文言が盛り込まれた。