「可能性見つける機会に」 元日本留学生が授業 ごみ山の小中学校で
元日本留学生の有志が、西ジャワ州ブカシ市バンタルグバンのごみ最終処理場で働く親を持つ子どもたちが通う小・中学校「アル・ファラー」で日本語を教えている。発起人で日本語を教えるリスカ・ズライカさん(38)は「子どもたちにとって可能性を見つける機会になれば」と話す。(上松亮介、写真も)
「夢は僕らが世界を支配するカギ〜」―。貧困層の子どもたちが教師と夢を育んでいく姿を描いた映画「ラスカル・プランギ」の主題歌を、子どもたちが日本語で合唱する。今年1月26日から始まった毎週土曜の授業に出席するのは約20人。中にはごみを拾って売る親の仕事を手伝う子もいる。
授業は、1994年から2003年まで日本に留学したリスカさんが日本語を通して、バンタルグバンの子どもたちに何かできないかと始めた。リスカさんは「日本語を学んだからといって何ができるか分からない。手探り状態」と話す。若手元日本留学生のインドネシア日本同好会(KAJI)などで親交があったシギット・ウィドドさん(43)にも呼び掛け、現在2人で教えている。
子どもたちは、日本でも使われている教科書「みんなの日本語」で、色や体の部分など日常生活に必要な単語を学ぶ。個人個人で習得度は違っても、簡単な自己紹介や日本語の合唱ができるようになった。
10日には、中間層による社会活動に興味があるという国際交流基金ジャカルタ日本文化センターの小川忠所長らが訪れ、授業を見学。同センターの日本語専門家の二瓶知子さん、尾崎裕子さんは先生として飛び入り参加し、子どもらに日本語を教えた。ムハマド・サメン君(15)は「皆と勉強できて楽しい」と話した。
アル・ファラーは07年、ブカシ市の女性活動家、ウラン・サリさん(43)が創設。処理場で働く親を持ち、住民登録証(KTP)を取得していないなどの理由から教育機会を持てない子どもたちを教育してきた。日本語教育について、サリさんは「子どもたちが可能性を探ることができる貴重な機会に感謝している」と話した。