「撤退続出」は虚偽 労使問題過熱化で 労組連合が反論

 複数の労働組合総連合で構成されるインドネシア労働者評議会(MPBI)は6日、中央ジャカルタのホテル・メガで会見を開き、最近、労使問題に端を発する工場の襲撃などが原因で撤退を検討する企業が急増しているとの報道が出ていることについて、「事実に反している」と否定した。経営者側は7日にも撤退検討企業を公表する姿勢で、労使の対立先鋭化が懸念されている。(上野太郎)

 インドネシア金属労連(SPMI)などが集まるインドネシア労働組合総連合(KSPI)、全インドネシア労働組合総連合(KSPSI)、インドネシア福祉労働組合総連合(KSBSI)の三つのナショナルセンターで構成されるMPBIの会見には、撤退の報道が上がる地場系大手靴製造のスパトゥ・バタ社、サムスン電子現地法人の労組幹部らが出席。生産業務に従事する労働者のアウトソーシング、無契約の日雇い労働や最低賃金以下の雇用があるとして、それぞれの企業の内情を訴えた。また労組側は、インドネシアの賃金水準が、他国より高くなっているという経営者側の主張に反論。1時間当たりの賃金が、中国やベトナムでは7千―8千ルピアだが、インドネシアでは、経営者側が主張する9千ルピアには達せず、手取りの給与から交通費や食費を差し引くと3千―4千ルピア程度にしかならないと主張した。
 KSPIのイクバル・サイド会長(SPMI会長)は、日系企業を含む企業名を列挙した上で、交渉の席に着き、前向きな結果が出ている企業はたくさんあり、そのような企業を襲撃することはないが、一部の企業が違法なアウトソーシングを行っているため、問題になっているとの主張を展開。これまで、違法アウトソーシングの撲滅に向けたロビー活動をしてきたが、警察が取り締まりを行わず、司法も信頼できないため、やむを得ず、企業に対する直接的な行動に出ていると強調した。外資を含む投資が増加する中、「労働者を保護することができなければ、投資の意味はない」として、今後も労働者の権利を訴えていく意向を示した。
 現在、政労使間で協議を進めている来年の最低賃金では、労組側は最賃の算定基準となる適正生活経費(KHL)について、要求している86項目への引き上げを60項目で妥協する代わりに、KHLの150%まで最低賃金を引き上げるよう要求。KHLとして求めている額は198万7千ルピアのため、約280万ルピアになる。イクバル会長は「この数字を基に話し合いを進めることになる。妥協点としては、220万ルピアから280万ルピアの間になるだろう」とけん制。仮に労組側が求める最低レベルの220万ルピアとしても、今年の同州の最低賃金である152万9千ルピアから42%増となるため、経営者側は受け入れを拒否することが見込まれ、今後も協議の難航が予想される。
 イクバル会長によると、労働移住相は、今週にもアウトソーシングに関する明確な規定を発出する予定。KSBSIのムドホフィル議長は、新規定について、「アウトソーシングは警備、清掃サービス、労働者輸送、採掘、法人向けケータリングの5業種に限定されることになる」と話した。新規定では、実施までの移行期間を1カ月から1年の間で調整していたが、イクバル会長によると、3カ月で落ち着く見込みという。
 イクバル会長はじゃかるた新聞に対し、「日本企業の多くは、明確な法規があれば、それを順守する文化がある」として、新規定により、日系企業におけるアウトソーシングの問題が収束していくことに期待を示した。

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