北カリマンタン州設置へ 34番目の州 豊富な天然資源還元 国境地域の生活改善

 国会本会議はこのほど、北カリマンタン州や他州4県の計5つの新自治体設置法案を可決した。インドネシアの自治体は34州402県93市になる。カリマンタン島は世界の島の中で3番目に大きく、日本の国土の2倍近くの面積を持つ。新州は同島北部のマレーシア2州と国境を接し、領土紛争が頻発してきたため、国土保全の最前線の自治体として機能させるほか、豊富な天然資源の利益を還元し、遠隔地の市民の生活改善を目指す。

 北カリマンタン州は、マレーシアのサバ州やサラワク州と接する東カリマンタン州のヌヌカン県やタラカン市、マリナウ県、ブルンガン県、タナ・ティドゥン県の4県1市で構成され、ブルンガン県にあるタンジュン・セロルが州都になる。総面積は約7万平方キロメートル、人口は約62万人。
 マリナウ県のアドリ・パトン官房長は地元メディアに対し、「市民が長年望んでいたことが実現した」と歓迎の意を表明。マレーシアと接する国境を抱え、国土保全の最前線に立つ州として発展させていきたいとの意向を示した。
 1998年のスハルト政権崩壊以降、インドネシアは地方分権を推進し、これまでに南スマトラのバンカ・ブリトゥン、西ジャワのバンテン、北スラウェシのゴロンタロ、北マルク、リアウ諸島、西スラウェシ、西パプア、北カリマンタンの計8州が新設された。
 北カリマンタン州設置に向け、ガマワン・ファウジ内相は「9カ月以内に実行に移す。州議会などの設置は2014年になる予定で、州知事選挙は2015年に実施する」と語った。
 分割前の東カリマンタン州の面積は20万4534平方キロメートルで、インドネシアの全州のうち、パプア州に次いで2番目。ジャワ島(12万6千700平方キロメートル)の約1.6倍。ガマワン内相は「東カリマンタン州は広すぎたため、公共サービスの実現に時間が掛かっていた」と説明した。
 国会第2委員会(内政、法律)のアグン・グナンジャール・スダルサ委員長は、北カリマンタン州がマレーシア海峡やスラウェシ海に接することから「石油や天然ガスなど資源が豊富な地域であり、国境付近の人々の生活を豊かにできる」と指摘。マレーシアへの人身売買の温床になっている地域もあり、北カリマンタン州が監視を強化していくべきだと述べた。
 また同委員長は、新州承認の背景には領土保全のための警備強化もあると指摘する。インドネシアは2003年、国際司法裁判所でカリマンタン島東沖のシパダン、リギタン両島の領有権をマレーシアと争い、敗訴したことがある。05年には、カリマンタン島沖スラウェシ海アンバラット石油・ガス鉱区で、マレーシアの軍艦が領海侵犯を繰り返し、インドネシア海軍が追い払う騒ぎも起きた。
 一方で、マレーシアとの国境付近は長年、医療や住宅、インフラ開発が遅れ、住民はマレーシアとのつながりが強い。ルピアよりマレーシアの通貨リンギットを使う地域もある。インドネシア国内の近隣都市へ行くにもボートで長時間かかり、マレーシアの町へ出た方が近い地域もあり、出稼ぎに行く住民が後を絶たない。インドネシア科学院(LIPI)のシティ・ズフロ氏は「天然資源が豊富でも、インフラ整備や人的資源を育てることが重要だ」と強調した。

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