現場把握から着手 役場、住宅地、交通機関、繁華街 ジョコウィ知事 就任2週間

 ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)ジャカルタ特別州知事が今月15日に就任してから2週間が経過した。路地裏から伝統市場、繁華街など各地を回り、人々の声をくみ取りながら、同行する州政府の責任者に現場で指示を出し、矢継ぎ早に新たな施策を打ち出す。庶民派と鳴り物入りで当選した新知事は、渋滞や洪水、住宅など山積する問題の解決に向け、来年の州予算編成で浪費排除を断行する方針を示している。(配島克彦)

 ジョコウィ知事は通常午前7時、中央ジャカルタの知事官邸に登庁し、会議を短時間で済ませて市内の視察に繰り出す。時には官邸にも寄らずに公邸から直接視察現場に向かう。行き先は運転手にも直前まで知らされない。警護車や同行する州政府幹部の車が知事の公用車を追い掛ける。
 オンライン・メディア「コンパス・コム」の知事官邸の番記者、インドラ・アクントロ氏は「ファウジ・ボウォ前知事時代と比べ、すべてが一変した」と語る。
 これまでは知事が来る前に準備を整えるのが慣例だった視察は、正真正銘の抜き打ち検査になった。役場や市民生活の実態を知ることで、現場から改善点を見出す新知事の方針だ。
 役場では、電子住民登録証(E―KTP)をはじめとする行政サービスの実施状況を確認。保健所の歯科検診では知事自ら番号札を受け取り、順番待ちから診察を受けるまで実際に体験し、不備を確認する徹底ぶりを見せる。
 ジョコウィ知事が各地の状況把握を優先する一方で、知事官邸では、バスキ・チャハヤ・プルナマ副知事が連日会議を開く。国有企業や中央政府幹部をはじめ、労働者団体のデモ隊代表との面会もこなす。正副知事の分業体制が明確化されているようだ。
■各地にオーチャード
 選挙戦で訴えた公約のほか、新しい施策も次々と掲げている。
 30日には、ジョコウィ知事が市街地3カ所に「クリエイティブ・パブリック・スペース」を開設すると発表。中央ジャカルタのショッピングモールのタムリン・シティ―eX、南ジャカルタのブロックM―マイエスティック、西ジャカルタのコタ・トゥア(旧市街)の三つの地域をシンガポールのオーチャード通りのような開発地区に指定するという。
 露天商を特定の場所にまとめるなど整備し、歩道沿いに手工芸品店や公園、ベンチなどの施設を設置。歩行者が安心して歩ける地域づくりを目指す。ジョコウィ知事はマリ・パンゲストゥ観光創造経済相と協議し、州議会に近く草案を提出する方針だ。
■交通の運営統合を
 渋滞対策の切り札である都市高速鉄道(MRT=大量高速交通システム)について、ジョコウィ知事は特に路線や建設費などに関する説明を要求。「熟知した上で早急に事業を進展させる」との姿勢を示し、州営MRT社や州運輸局幹部と協議を進めている。知事は30日、「来週にはJICA(国際協力機構)と会合を開きたい」と話した。
 モノレールは都心3路線の建設計画を推進する方針を示しているが、副知事はMRTとモノレールの運営を統合し、交通機関の効率化を図るべきとの考えを表明、統合に向け調査する必要があるとしている。
 老朽化したコパジャやメトロミニなど公共バス、トランスジャカルタの新車両購入、大通りを走る車両への電子課金システム(ERP)の導入などに向けた協議も始まっている。
■モスクや競技場も
 市民の生活環境改善に向け、知事は精力的にカンプン(下町)を回り、低所得者層向け高層住宅建設や洪水対策などに関する視察を実施。伝統市場の新築、改修工事のほか、市場と集合住宅の複合施設を建設し、入居者の交通費負担軽減などに結び付ける方針を示している。
 市民向けのパフォーマンスも目立つ。「イスティクラルは国を代表するモスク。ジャカルタ州政府が運営する大モスクの建設を」。華人でプロテスタントのバスキ副知事が「ムスリムのジョコウィ知事の発案」として明らかにしたモスク建設計画も注目を浴びている。
 一方で、高校生同士の乱闘事件が続発する中、ジョコウィ知事はスポーツを振興する意向を表明。北ジャカルタに用地を確保し、ジャカルタのサッカーチーム「プルシジャ」用の競技場を建設すると明らかにした。MRT中央駅建設計画に絡み、取り壊しが予定されている南ジャカルタのルバックブルス競技場の代替施設にしたいとしている。

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