テロ犯11人を逮捕 新興過激派組織か ジャワ島4都市 爆弾所持、米国大使館標的に 国家警察
中央ジャカルタの在インドネシア米国大使館や中部ジャワの警察機動隊本部など4カ所を狙った爆弾テロを計画していたとして、国家警察は26日夜から27日昼にかけて、ジャワ島の4都市で同一の過激派組織のメンバーとみられる計11人を逮捕した。爆発力の高い爆弾も各地の隠れ家で見つかり、警察は新興勢力の過激派が各地でテロを画策していたとみて捜査を進めている。
国家警察対テロ特殊部隊(デタッチメント88)は、中央ジャカルタ・クボン・カチャンで1人、西ジャカルタ・パルメラで2人、中部ジャワ州ソロで3人、西ジャワ州ボゴールで3人、東ジャワ州マディウンで2人の計11人を逮捕。
マディウンやソロ、ボゴールの民家で、使用可能な爆弾、爆弾製造の材料、インターネットからダウンロードしたとみられるインドネシア語と英語の爆弾製造マニュアルなどを押収した。爆弾は液化石油ガスを使ったもので、高い爆発力があるとみられる。
国家警察によると、グループは最近結成されたとみられる「インドネシアのための(イスラム)スンニ派の運動(HASMI)」。米国大使館のほか、在スラバヤ米国領事館、米系鉱山会社フリーポート・インドネシア社本社が入る南ジャカルタ・クニンガンのオフィスビル「プラザ89」、中部ジャワ州スマランの機動隊本部を標的にテロを計画していたという。
国家警察は8月以降、ソロや首都圏で爆弾を製造していた過激派組織を摘発。一連の捜査で中部スラウェシ州ポソなどで暗躍する組織と関連があるとしてきたが、HASMIは新興のグループの可能性もあるとみて捜査している。
■「真面目なムスリム」 反米姿勢は露骨に 逮捕現場の首都下町
犠牲祭の27日、クボン・カチャンの祭りの雰囲気は一転した。「あの人がテロリストなんて」。ナルト容疑者(38)の実家と同じ、第14クボン・カチャン通りに暮らす主婦のギタさん(48)は驚きを隠せない。
高級ショッピングモール「プラザ・インドネシア」の裏側にある下町。在インドネシア日本大使館やオフィスがあるジャカルタの目抜き通り、タムリン通りはすぐ近くだ。モスクであった犠牲祭の運営委員を務めた同容疑者はヤギをと殺。家族と休んでいた午後0時15分、警察の対テロ特殊部隊に拘束された。持っていたかばんからは爆弾の材料が見つかった。友人という男性は「ここにテロリストの家なんかない」と記者に突っかかる。
外国人も多い近所の下宿を営む男性(40)によると、同容疑者はイスラムの話題になると語調が強くなり、パレスチナ問題ではイスラエルや米国に批判的だった。「インドネシアは愚かだ。米国の手下に成り下がっている」と語っていたという。
同容疑者はクボン・カチャンで生まれ、物静かで近隣住民ともめ事を起こしたことはない。自宅近くのタナアバンの運送業者で働き、結婚してから自宅を出て、幼い子どももいるという。顔を合わせば、あいさつする同容疑者はイスラムの勉強会(プンガジアン)の説教師をしたことも。ギタさんは「真面目なムスリムだった」と話した。(上松亮介、関口潤)