インフラ開発に影響も 土地収用で紛争続発 警官発砲で少年死亡 南スマトラの農園用地で

 道路や港湾建設など、インドネシアのインフラ開発推進に不可欠な土地収用の問題に再び懸念が持ち上がっている。ユドヨノ大統領は27日、昨年末に成立した土地収用法の運用細則となる大統領令を近く発令することを明かし、収用手続きの迅速化を目指す姿勢をアピールしたが、同日、土地収用をめぐり治安部隊が住民に発砲し、12歳の少年が死亡する事件が発生。スハルト政権下で行われてきた強権的な土地接収を踏襲していると見る専門家もおり、土地収用の迅速化を望む声が投資家から上がるインフラ用地にも問題が波及する可能性をはらんでいる。

 公共用地の収用手続きをめぐっては、昨年末に土地収用法が成立。施行細則を定める大統領令の骨子を今年5月に示すなど、インフラ開発の投資誘致を目指し、政府は法整備を着々と進めてきた。
 25日に行われた閣議後の会見でも、大統領は土地紛争問題に言及。苦情や報告などのSMS(携帯電話のショート・メッセージ・サービス)を毎日400―500件受けていると説明した。特に農園用地収用では、これまで、地元社会に利益が還元されていない例も見られるとして、地方自治体や警察、国軍、国土庁の出先機関などに対し、住民の要望などを十分にくみ上げるよう指示。土地紛争解決に向けた政権の積極姿勢をアピールしていた。
 ところが、その矢先の27日、サトウキビ農園の開発用地1万4千ヘクタールをめぐり、運営会社の国営第7プルクブナン・ヌサンタラ(PTPN)社と住民との間で対立が起きていた南スマトラ州オガン・イリル県で住民と警察機動隊が衝突。12歳の男子小学生が頭部を撃たれて死亡した。住民側に複数の負傷者がでた。
 この村では、以前からPTPN側と住民の衝突が頻発。同社が取得しているのはうち6千ヘクタールにすぎないと主張する住民と、企業の協議が今年5月には決裂し、住民が農道を封鎖、農園や工場は一時操業停止に追い込まれた。
 今回の発砲事件では、同社の倉庫から化学肥料を盗んだとして、警察が実施した家宅捜索に反発した住民の投石が、今回の衝突の直接的な原因とする報道もある。機動隊が実弾で応戦したという。治安当局は、正当な鎮圧行動だったと主張し、少年を狙ったものではなく、流れ弾だったとしている。
 人権擁護団体の「社会正義のための人権委員会」のグナワン委員長は、近年の土地紛争について、1998年まで続いたスハルト政権時に「経済発展」の大義名分の下、十分な補償のないまま強制的に土地を接収された経験が背景にあると指摘。「もし当局が住民の声を無視しなければ紛争は平和的に解決できる」と主張した。

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