在インドネシア日系企業の経営環境
JETROは、38年にわたり、海外進出された日系企業の皆様の経営状況、業況や直面している課題などの調査を行っている。この度、2024年8月~9月に実施した「2024年度海外進出日系企業実態調査」(製造業267社、非製造業209社、計476社が回答)の調査結果をもとに、そこから読み解けるインドネシアに進出された日系企業の経営状況について御説明したい。
まず、24年度の営業利益について、「黒字」と回答した企業の割合は72・1%に達し、7割以上の会社で黒字となっている。この数字は、ASEAN諸国の中で最も高い数字となっている。また、昨年23年度の営業利益と比較しても、営業利益の「改善」を見込むと回答した企業が38・4%となっており、特に、非製造業では4割を超える企業が営業利益の改善を見込んでいる。さらに、今後1~2年の事業展開の方向性について「拡大」と回答した企業は47・3%に上り、約半数の企業が事業拡大意向をもっている。
インドネシアの投資環境上のメリットとして、「市場規模・成長性」(80・1%)、「人件費の安さ」(37・7%)、「ワーカー等の雇いやすさ」(31・0%)が上位に挙げられている。特に、消費市場の拡大は小売業や飲食業にとっても追い風となり、日系企業の新規出店も続いている。 一方、リスク要因としては、「現地政府の不透明な政策運営」(66・2%)が最大の懸念点となるほか、税制・税務手続きの煩雑さ(64・0%)、法制度の未整備(55・2%)との回答が上位を占め、円滑な企業活動を進める上で頭痛の種となっている。特に、インドネシア政府は国内産業の保護や育成を目的に、輸入規制をはじめさまざまな規制を導入しているが、その施行が突然であったり、解釈が不明確であったりするケースが散見され、これらは、企業の皆様の予見可能性を低め、リスクとして認識されている。
今年度の調査では、直近5年間のトレンドとして、生産の移管状況についても調査した。過去5年間で、日本からベトナムに生産移管した数は106件、タイへは67件、インドネシアへは43件となっている。また、中国からベトナムへは90件、タイへは25件、インドネシアへは16件となっており、ベトナムへの生産移管が多い。調査担当からの聞き取りによれば、ベトナムでは、多様な業種・規模の企業が進出しており裾野産業が充実していること、中国からの距離が近く中国国内のサプライチェーンを活用しやすいこと、人件費・行政手続き面などでリスクはあるものの致命的なリスクが少ないこと、などが移管先として評価されている。
インドネシア市場は、日系企業にとって引き続き成長の機会が広がる一方で、政府の政策運営の不透明さや調達環境の課題など事業展開の障害も存在している。
JETROとしては、大使館やJJC、その他関連機関と連携しつつ、インドネシア政府との対話を進め、日系企業の現地ビジネス環境の改善に向けた働きかけを進めていくとともに、企業の皆様のニーズの高い分野でのセミナーなどを開催し、お役に立つ情報提供を行っていきたい。お困りごとや貿易・投資にかかるご相談があればいつでもご連絡をいただきたい。(JJC調査部会長 JETROジャカルタ事務所長髙橋正和)