中国新移民「潤日」、著者に聞く インドネシアで中国移民は増えているのか 舛友雄大氏「生活よりは投資の国」

 近年、習近平政権下の中国から快適・安全な生活環境を求めて日本に移民する中国人が急増している。その実態を描いた著作「潤日」を先月に発売したジャーナリストの舛友雄大氏によると、この動きは日本だけでなく、シンガポールやマレーシア、タイといった東南アジア諸国にも見られる動きだという。インドネシアでは同様の中国移民の動きはあるのか。インドネシアの英字紙ジャカルタポストで勤務した経験もある舛友氏に現状を聞いた。

―「潤日」とはそもそもどういう意味か?
 「潤の中国語の読み方はrunで英語の『逃げる』のrunと同じのため、現政権下の中国から脱出してより豊かな生活を始めようとする人のことを指す呼び名となった」

―著作では日本に移住してくる層は経営管理ビザなどを取得した富裕層が多いとのことだったが、インドネシアではどうか。
 「基本的には住むより投資する国というイメージだ。子弟の教育面でも優れた環境だと言えない点も移住先としての人気が出ない理由だろう。インドネシア政府は富裕層向けにゴールデンビザを用意しているが、中国本土のSNSで検索しても、ほとんど誰も話題にしておらず、現地で働く中国人に聞いてもよく知らない。ビザの申請者数も目標には全然届いていないようで、盛り上がっている様子もない」

―1998年の暴動で現地華人が被害を受けた歴史が影響しているか。
 「あの暴動のイメージはやはり根強い。あれから25年以上経っているとはいえ、ネットで検索すれば当時の状況が出てくる。最近だと、バスキ・チャハヤ・プルナマ(通称アホック)元ジャカルタ特別州知事が知事を退任するきっかけとなった舌禍事件に対するインドネシアの反応は中国本土でも話題になっていて『華人が活躍しにくい国だ』というイメージを強くした」

―実際に中国からインドネシアへ移住・投資してきた人たちは、どんな層か。
 「超富裕層は少ない印象だ。中小企業の経営者や、エンジニアリングなどに携わる雇われの中間層が仕事を探しに来るというケースの方が多いと思う。一方で、スタートアップ界隈でも活躍が目立っている」

―インドネシア以外の東南アジアの国々はどうか。
 「シンガポールやマレーシアは外国人向けの制度が比較的整っている。タイのチェンマイではインターナショナルスクールもあり、移住先として最近特に人気が高い」

―米中対立を背景に、中国が東南アジアに拠点・投資を移す流れがある。インドネシアは注目されるのだろうか。
「東南アジア全体として、中国資本は流入し続けるだろう。全体としてインフラ投資が活況のほか、タイやベトナムに電子部品製造拠点を移す動きも鮮明になってきた。インドネシアには資源と大市場があるが、政治リスクや規制の多さが課題になっている。それでも成長可能性は大きい国なので、中国としても無視できない。すでに資本を入れて物流や金融などで一定以上の規模に成長した企業も数多く、今後も増えていくと思う」(じゃかるた新聞編集長 赤井俊文)

◇舛友雄大(ますとも たけひろ)
 1985年福岡県生まれ。カリフォルニア大学国際関係修士。2010年中国の経済メディアに入社後、日本を中心に国際報道を担当。2014年から2016年までシンガポール国立大学で研究員。アジアの現在を、日本語、英語、中国語、インドネシア語の4カ国語で発信中。『潤日』が初の著書。


書籍紹介 潤日(ルンリィー)
 急増する中国新移民と潤日コミュニティの実態を地道な取材で鋭く捉えた一冊。まず中国での習近平政権誕生から生まれた世界現象としての「潤」を概観。中国新移民が東京、大阪などのタワマンに住み、日本の有名学習塾に子弟を通わせ新たな「お受験戦争」のプレーヤーとなっている現状を描く。引退した中国人企業家が安住の地として日本を選ぶ背景についても明らかにする。本書は中国新移民の多様な側面を捉え、変質する日本社会への新たな視点を読者に提供する。今月末から電子書籍版も発売予定。(東洋経済新報社、税込1980円)



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