「国民食」テンペが消える? 生産中止で救済訴え 輸入一辺倒に批判
インドネシアの国民食ともいわれるテンペの主原料として使われる大豆の価格が高騰し、生産者を直撃している。大豆のほとんどを米国からの輸入に頼っており、干ばつによる大豆高騰が直撃した格好。首都圏のテンペ・豆腐生産者は「政府が手を打たなければテンペが消える」と、救済を訴えるため、今週にも生産を中止する構えだ。輸入一辺倒で国内農業振興をなおざりにしたとして、経済専門家からも政策を批判する声があがっている。
生産中止を打ち出しているのはインドネシア・テンペ・豆腐・協同組合ジャカルタ支部(組合員4821業者)で、原料として月1万トンの大豆を使用する。同支部のスハルト支部長は「このままでは利益の確保は難しい。政府が問題に取り組まねば、生産中止は全国(8万3545業者)に広がるだろう」と警告している。
同協同組合によると、今年3月に1キロ当たり5500ルピアだった大豆価格は、7900ルピアに上昇したという。主要因は、1956年以降最悪とされる米国の干ばつによる大豆価の高騰。インドネシアは大豆の輸入総量(10―11年の1年間で189万7千トン)の91.2%を米国産に頼っている。ラマダン(断食月)に伴う物価全体の上昇も重なった上、簡単には販売価格に転嫁できないため、生産者には泣きっ面に蜂の状態だ。
農業経済学者で、経済金融開発研究所のブスタヌル・アリフィン氏は、大豆の生産振興や研究に割り当てられる予算は小額であることなどを理由に、「政府は大豆の国内生産量を上げるための策を打っていない」と批判。国内農業の競争力低下を招き、「テンペと豆腐業者が原料を品質面でも輸入品に頼る一因になっている」と嘆いた。