つながりは、未来への翼
近年、気候変動や生物多様性の損失をはじめとする地球環境問題の深刻化や、日本国内における少子高齢化に伴う人口減少など、私たちを取り巻く社会課題は多岐に渡っている。
JALは長年、社会インフラとして「安全・安心な移動」を目指してきたが、コロナ禍を経て経営環境も大きく変わってきた。
私たちは「人・モノの移動の価値」に着目し、移動を通じた人と人、人とモノや地域との「関係・つながり」は、社会課題の解決と、サステナブルな未来の実現に貢献できると考えた。
移動がもたらす「新しい景色との出会い」、「地域で暮らす多様な人々とのつながり」、「また会いたいと思える人や土地への愛着」という価値は、人々の豊かさや幸福、すなわちウエルビーイングにつながると信じている。
これらを背景に、昨年は「観光」ではなく「学び」を通じて地域とつながるプラットフォーム「旅アカデミー」を開校、すでに5つのプログラムを発表した。この取り組みは今後海外でも展開していく。
また、JALがサポート契約を結ぶ米MLBロサンゼルス・ドジャースで活躍する大谷翔平選手と「夢に挑戦する若者たち」を応援するための「ドリームマイルパス」プロジェクトも始動した。
近年、若者を取り巻く社会課題として「移動格差」や「体験格差」と呼ばれる問題がある。
例えば部活動の遠征費用が家計を圧迫し、部活動を辞めざるを得なくなったり、海外留学の渡航費や学費が捻出できず断念してしまったりするケースなど、「移動の経済的負担」が夢を叶える障害になっている現実がある。
特にコロナ禍により物理的な移動が制限されてきた若年層は、物価高や円安による経済的負荷などが相まって、経験・体験の数が他の世代と比べて圧倒的に少ないとされている。
これらの現状とともに大谷選手が花巻東高校入学から現在に至るまで、地球22周分ほどになる892・440kmもの「移動」を重ね、さまざまな夢を叶えてきたという事実に着目した。
「すべての夢に、羽ばたくチャンスを。」というメッセージを掲げ、この大谷選手の総移動距離をベースとして、JALのマイレージ会員のみなさまとともに、これから夢の実現のために移動が必要な若者たちに、それぞれの出発地から目的地までの航空券をマイルから還元するプロジェクトである。
今や日常生活にSNSが欠かせない時代になっているが、現地に行くこと、見ること、話をすることで得る新たな発見や驚き、そしてその体験を通じて生まれた絆や描いた夢は、どこの国・地域であろうと明るい未来への翼になると信じている。
JALが初めてジャカルタ線を就航させたのが1962年、今年で63年を迎える。
1972年には日系企業7社を発起人としてJJCの前身である財団が立ち上がることになるが、JALはその1社として創設時よりともに歩んできた。
これまでの歴史の中、出張でご利用いただいたお客さま、新婚旅行でご利用いただいたご夫婦、親子揃って海外赴任としてご利用いただいたご家族、それぞれのシーンにそれぞれのストーリーがある。
日本のお客さまのみならず、インドネシアやその他さまざまな国や地域も含め、多くのお客さまの支えで今のJALがある。
これまでの感謝の気持ちとお客さまそれぞれのストーリーを大切にし、いつもお客さまに寄り添えるエアラインとして、これからも日本・インドネシア両国、そして世界の未来のための翼になりたい。(安藤正人 日本航空ジャカルタ支店長/JJC個人部会長)