資金提供者に汚職疑惑 大統領の民主党 正念場 党首ら幹部、捜査対象に 支持率低下止まらず

 中部スラウェシ州ブオル県の農園開発をめぐる汚職事件で、関与が疑われている実業家シティ・ハルタティ・ムルダヤ氏への捜査網がじわじわと狭まっている。中央ジャカルタ・クマヨランの国際展示場(JIExpo)の運営会社などを経営するハルタティ氏は2004年、09年の大統領選でユドヨノ大統領陣営の大口の資金提供者となり、大統領の支持母体の民主党で最高顧問会議委員も務める大物実業家。アナス・ウルバニングルム民主党党首らの関与が疑われているハンバラン西ジャワ州ボゴール県スントゥールのハンバラン競技場の建設事業に絡む汚職事件も捜査が進展しており、支持率の低落傾向に歯止めが掛からない民主党は事件と党の関連性はないと強調するが、ハルタティ氏が逮捕されれば、政権への打撃は必至だ。

 事件は、ハルタティ氏が所有するパーム油農園会社が開発権を取得するため、ブオル県側に賄賂を渡した疑い。汚職撲滅委員会(KPK)の捜査官は先月26日、農園会社社長がアムラン・バタリプ県知事に賄賂を渡す現場を押さえ、両氏を容疑者に断定した。ハルタティ氏には事件の参考人として海外渡航禁止処分を下している。
 同知事は今月4日に行われた県知事選に出馬。知事側は選挙資金としてハルタティ氏側から20億ルピアの提供を受けていたことを明らかにしている。「賄賂ではない」と主張しているものの、知事とハルタティ氏が密接なつながりを持っていたことは確実視されている。
 知事選は汚職事件発覚後の投開票となり、開票速報ではアムラン知事は対立候補に敗れる公算が高くなっている。

■司法マフィアも再登場
 KPKは同事件に絡んで23日、実業家のアルタリタ・スルヤニ氏をシンガポールで事情聴取した。KPKは今月初めに参考人として出頭するよう同氏に命じていたが、シンガポールで治療中であることを理由に、命令に応じていなかった。
 アルタリタ氏は2008年の最高検疑獄で禁固4年半の有罪判決を受け、昨年まで服役。捜査当局に幅広い人脈を持ち、汚職事件などに介入して「大物女性司法マフィア」と呼ばれた。服役していた刑務所で特別室があてがわれ、豪華な監獄暮らしを送っていたことでも話題になった。
 ブオル県では同氏の息子が経営する企業がパーム油農園を所有しており、KPKは汚職事件に関与していた可能性もあるとみて、捜査を進めている。
 事件について、民主党の最高顧問会議委員を務めるシャリフディン・ハサン協同組合・中小企業担当国務相は「ハルタティ氏は党の会議にも頻繁に出席するが、事件はあくまでも個人的な問題。彼女は民主党に入るずっと前から実業家だった」として、党とは無関係であると強調した。

■内部分裂の兆しも
 一方、ハンバラン競技場の汚職事件では先週、青年スポーツ担当国務相事務所のデディ・クスディナル会計・総務局長が容疑者に断定され、民主党のアナス党首や同党幹部のアンディ・マラランゲン青年スポーツ担当国務相の関与の有無に焦点が移った。
 コラン・テンポ紙は23日付1面で、ハルタティ、アンディ、アナスの3氏とほかの汚職事件ですでに逮捕されている民主党のムハンマド・ナザルディン元会計担当幹部とアンジェリナ・ソンダク同党副幹事長(停職中)の5人の顔写真を並べ、党幹部の汚職疑惑が次々と浮上していると説明した。
 また今年3月と6月に発表された三つの機関の政党支持率調査で、いずれも民主党がゴルカル、闘争民主両党の後塵を拝して3位となっていることを紹介。数十人の党員が他党へ移籍するとの観測も上がるなど、党の分裂の兆しもあり、2009年の国会議員選挙で国会第1党に躍進した面影はすでになくなっていると報じた。

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