未来を創る人材
2024年は現地法人設立50周年を迎える日系企業を目にする機会が多い。1967年に外国投資法が制定され、1970年代から日系企業の進出が顕著になった為であるが、当時と比較すると、当地のビジネス環境が大きく変化していることは想像に難くない。そうした変化を乗り越えながら、半世紀に亘って企業活動を続けてきた日系企業が数多くあることを誇らしく思う。当社も、当地のニーズに応じてビジネスモデルを変化させてきた。1965年にジャカルタ事務所を開設した当初は繊維製品の貿易が中心であったが、1986年のヤマハ・インドネシア・モーター・マニュファクチャリングへの出資参画を皮切りに事業投資にも注力。1990年代後半以降はエネルギー需要増に貢献すべく、基幹インフラ投資へ事業を拡大。電力インフラ開発やタングーLNGへの出資参画もその一環であった。2010年代以降は物流インフラ整備を通じてインドネシアの経済成長と快適な暮らしづくりに貢献すべく、コンテナターミナル開発・運営事業、地下鉄プロジェクトへも参画。更に近年では成長が期待される消費者事業にも注力している。また、インドネシア政府の東部インドネシア経済発展促進策を踏まえ、2023年にはスラバヤ支店を再開し、同地域のポテンシャルを最大限に活用すべく取り組んでいる。
このようなビジネスの変化に柔軟に対応する為には、優秀な人材の確保が不可欠であり、人材育成は企業の持続的成長に必須といえるだろう。当社の様な業態では将に「人材こそ宝」である。当地でも新卒採用を行っており、10期目を迎えた今年度は多数の応募者の中から5名を採用した。即戦力となるキャリア採用も勿論重要であるが、新卒採用社員は時代に即した多様な価値観をもたらしてくれる貴重な存在である。新卒、キャリア採用問わず、様々な研修や本店を含む海外駐在等を提供し、日々スキルアップルを促している。
更に、当社の枠を超えた人材育成への貢献としては、日尼両国の関係強化とインドネシア発展に寄与する人材の育成を目的に、「三井物産インドネシア奨学基金」を1992年に設立。本基金では、選抜された高校卒業生への奨学金給付を通じて日本での学業と生活を5年半に亘って支援しており、設立以降54名の学生を日本に送り出している。Z世代が最大の人口(約28%)を占める当地において、国際的な視野を持つ若い世代の育成は非常に重要な使命である。
インドネシア政府は2024年9月13日に国家長期開発計画(RPJPN)2025―45を発表し、その中で「人材競争力の向上」を重要な方針として掲げた。JJCの人材育成検討コミッティでは、当地の労働政策や人材育成に関する情報収集と提言を行うと共に、労働省やインドネシア商工会議所(KADIN)、インドネシア経営者協会(APINDO)との連携を通じ、当地の人材育成に貢献する為の検討を進めている。JJC会員企業をはじめとする製造業を中心とした日系企業は、各社での従業員教育・研修等を通じ、インドネシア人材のスキルアップや競争力強化に長年貢献してきた。当社も引き続き当地でのビジネスの深化はもとより、両国の関係強化に貢献すべく尽力し、今年度のJJC活動方針に掲げる「未来を共創する伴走者」の実現に向けて関係者の皆さんと共に歩んでいきたい。(インドネシア三井物産社長 菊地原伸一 JJC 理事長)