環境配慮型建設へ

 東南アジアの広大な群島国家インドネシアは世界第4位の人口を誇り、近年、建設分野でも目覚ましい成長を遂げている。堅調なマクロ経済、戦略的インフラ開発、ヌサンタラへの首都移転プロジェクトなどに後押しされ、インドネシアの建設市場は大きな成長と革新へのポテンシャルを秘めている。建設業界の2023年第4四半期の成長率は7・68%であり、国内総生産(GDP)全体の10・49%を占めている(インドネシア中央統計庁)。この数字は、建設業がインドネシア経済の重要な柱となっていることを如実に示している。
 インドネシアのインフラ整備は急速に進んでいる。2019年4月に開通したジャカルタ大量高速鉄道(MRT)や23年10月に開通したインドネシアの高速鉄道サービス「Whoosh」はその代表例だ。これらのインフラ整備は、インドネシアの経済成長戦略にとって極めて重要な位置を占めており、都市間の移動時間短縮による経済活動の活性化が期待されている。
 建設部門の大規模プロジェクトとして注目を集めているのが、インドネシア首都移転プロジェクトだ。ジャカルタから東カリマンタン島に建設予定の新首都(ヌサンタラ=IKN)への移転は、ジャカルタが抱える深刻な交通渋滞、地盤沈下、環境問題の解決を目指している。23年5月に広島で開催された主要7カ国(G7)サミットでは、日本企業とヌサンタラ新首都庁が首都移転計画に関する協力覚書を交わした(23年5月26日付UR都市機構プレスリリース)。今後、日本の高度な技術をこのプロジェクトにどう活用できるか、日本企業各社が模索を続けている。
 一方、インドネシアは環境面で大きな課題に直面している。大量のエネルギー消費による環境負荷の増大だ。これに対し、インドネシア政府は二酸化炭素排出量の削減とエネルギー効率の向上を目指し、様々な取り組みを推進している。再生可能エネルギーの開発、エネルギー効率向上技術の導入、国民の意識改革・教育などがその例だ。
 建設業界でも環境配慮の動きが活発化している。ESCO(Energy Service Company)と呼ばれる、建物の省エネルギー化に向けた包括的なサービスへの関心が高まっている。ESCOは、建物の設計段階から施工、運転、維持管理までを一貫して担当し、実現した省エネルギー効果の一部を報酬として受け取る事業である。弊社でも、ジャカルタ市内のオフィスビルで環境認証LEEDプラチナを取得した施工に携わるなど、環境負荷の低減と運用コストの削減を両立する建築へのニーズへの対応に取り組んでいる。
 急速な経済成長を遂げるインドネシアでは、建設分野の需要が拡大の一途をたどっている。24年の建設産業の市場規模は2830億㌦で、33年には5291億㌦に達すると予測されている(Research & Markets市場調査レポート)。この成長著しい市場で、日本企業は環境技術や耐震技術など高度な専門性を活かし、インドネシアの持続可能な発展に貢献することが期待されている。日本が培ってきた省エネ建築のノウハウは、インドネシアの環境負荷低減に貢献できるだろう。両国の協力関係を深めることで、インドネシアと日本の双方にとって、さらなる発展の機会が生まれることを期待している。
 髙橋恒 PT・TAKENAKA INDONESIA社長(JJC建設不動産グループ代表理事)

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