JJCから見える日系企業動向

 ジャカルタ・ジャパンクラブ(JJC)は、インドネシアで最大規模の日系コミュニティーであり、商工会議所としての法人部会と、日本人会としての個人部会で構成されている。
 そのJJCにとって先月、喜ばしいニュースがあった。個人部会の子どもを除く成人会員数は、コロナ禍に入った2020年3月末には2300人の水準。その後はデルタ株の流行時に約800人と4分の1にまで減少した。それが先月、コロナ後で初めて2300人に回復した。
 約1000人の児童生徒が在籍した日本人学校も、ジャカルタ日本人学校と19年に開校したチカラン日本人学校を合わせて900人を超え、徐々に回復が進んでいる。
 一方、法人部会の会員数は、過去には通貨危機や暴動などの困難な時代もあったが、幾度かの投資ブームを経て順調に増加。コロナ禍入口の20年3月末時点で715社と過去最高を記録した。
 しかし、コロナ禍の収束宣言が出て約2年が過ぎた24年現在でも、法人会員は昨年同時期と同数の687社にとどまっている。コロナの初年度に人の往来がなくなった旅行会社やホテルが撤退し、2年目は感染拡大による日本人駐在員の引上げの際、建設業や生活用品製造業、機械部品製造業などの幅広い業種で事業も一緒に整理する動きがあった。
 コロナ禍が収束した後もコロナ期間中の経験から、現地事業をオンラインでコントロールできると考えた企業もあり、日本人駐在員の撤退に繋がった。
 ここ1年の傾向としては、15あるJJCの産業別会合の「商品グループ」別に入退会の動きを見ると、最も退会が多かったのは金融保険グループでマイナス4社となった。日本人駐在員の役割を縮小してローカル役員を中心に舵取りをしていくことになった会社、市場の黎明期を支えた日系企業の役割を終えてローカルの事業パートナーへの株式売却を行った会社など、ある意味で日系投資としての〝卒業〟の段階を迎えた企業もあったと思われる。
 一方、最も入会が多かったのはサービス業グループ(プラス5社)、続いて燃料グループ(プラス2社)となった。当地への投資をけん引したキーワードのひとつは「環境」だ。太陽光パネルやバイオ燃料などを含めた新エネルギー、炭素の排出権の調整、廃棄物の回収・処理・再資源化など、当地での新たなビジネスチャンスの動きを捉えて進出されているものと思われる。
 これに呼応してJJCにもカーボンニュートラルタスクフォース、廃棄物規制ワーキンググループが設置されている。また、法律事務所を中心に駐在環境が整った業界でも入会が進んでおり、JJCが持つネットワーキングの場としての役割への期待があると受け止めている。
 JJCでは先月、新たに菊地原伸一理事長(インドネシア三井物産)が就任。スローガンを「未来を共創する伴走者~インドネシアの将来に寄り添うために~」と定め、新たな活動を開始した。
 厳しい国際環境の中でも、将来も日本企業が当地で事業を展開し、成長著しいインドネシアにとってのパートナーであり続けるため、10月に発足する新政権との関係構築も含め、JJCの役割は重くなっていくものと気を引き締めている。
 小倉政則 JJC事務局長(日本商工会議所・東京商工会議所より出向)

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