ジョコウィが躍進　現職ファウジは苦戦　首都知事選　決選投票で決着へ

　ジャカルタ特別州知事選挙は１１日投開票され、民間調査機関の開票速報（開票率１００％）の結果、中部ジャワ州スラカルタ（ソロ）市長の実績と庶民派の姿勢をアピールしてきたジョコ・ウィドド氏（５１）が約４３％を獲得、約３４％のファウジ・ボウォ現州知事（６４）を大きく引き離し、現職候補に厳しい判定が下された。過半数得票の候補がいないため、上位２位の両候補が決選投票（９月２０日予定）で決着を付ける見通しとなった。

　今回は２００７年の前回に続き、州民が直接投票で選ぶ２回目の州知事選。有権者７００万人は１１日午前７時から午後１時まで、州内１万５０５９カ所の投票所で投票。同日２時ごろから開票が行われた。
　民間調査機関インドネシア調査研究センター（リンカラン・サーベイ・インドネシア＝ＬＳＩ）の開票速報（１１日午後４時）によると、ジョコ氏（通称ジョコウィ）は得票率４３.０４％と圧倒的な強さを見せ、各種世論調査で首位を確実視されていたファウジ氏は３４.１７％と大きく水をあけられた。
　イスラム政党・福祉正義党（ＰＫＳ）の組織票を期待したヒダヤット・ヌルワヒッド氏は１１.７７％、独立候補の経済学者ファイサル・バスリ氏は４.８３％、ゴルカル党擁立の南スマトラ州知事アレックス・ヌルディン氏は４.３７％、独立候補の退役軍人ヘンダルジ・スパンジ氏は１.８０％と続いた。

■地道な活動の成果
　中央ジャカルタ・メンテンに構えたジョコウィ陣営の選挙事務所は勝利ムード一色。ジョコウィ氏は、開票速報で断トツ首位の結果に笑みが絶えない。
　取り囲む報道陣に対し「公式結果はこれから」としながらも「お金や物ではなく、良心から私たちを選んでくれた有権者の皆さんに謝意を伝えたい」と繰り返す。同日午後、決戦投票に向け、早くもヒダヤット氏と会談して協力を要請。これからも「市民と会い、問題点を話し合う。今までと同じことを続けていくだけ」と気を引き締めた。
　スマトラ島東沖のブリトゥン島出身で、ソロのジョコウィ氏と「落下傘ペア」を組み、ジャカルタ初の華人副州知事を目指すバスキ・チャハヤ・プルナマ氏は「既存の手法と正反対の選挙戦が功を奏した」と振り返る。
　カンプン（下町）に入ると「住民はカネ、スンバコ（生活必需品）、Ｔシャツをねだる」。「金品の代わりに連絡先を印刷した名刺やステッカーを渡し、改善点を教えてくださいと呼び掛けた」。地道な活動から「ジョコウィたちは他候補とは違うと評価されたのだと思う」と分析した。

■総選挙の前哨戦
　ジョコウィ氏は、日本の奈良にも例えられる中部ジャワの古都ソロでの業績を評価されながらも、「人口５０万人のソロと１千万人の首都では規模が違う」と懐疑的なジャカルタ州民に切り込んだ。選挙戦中、欧系団体主催の「世界のベストメイヤー（最優秀市長）」で最終候補２５人に入った、といったニュースも追い風となった。
　メガワティ元大統領（闘争民主党＝ＰＤＩＰ）と、大物退役軍人プラボウォ・スビヤント氏（グリンドラ党）が「鳴り物入りの地方首長」「中央政界の新顔」ジョコウィ氏を抜擢。後継者不足に悩むユドヨノ大統領の民主党らが再選を後押しするファウジ氏に挑んだ。２０１４年の大統領選や総選挙の前哨戦にもなった州知事選の第１回投票は、現職に厳しい判定を下した。

■「公式結果待って」
　一方、ファウジ陣営には激震が走った。ジョコウィ氏に得票率約１０％の大差を付けられた速報を横目に、ファウジ氏は「公式結果は出ていない」「決戦投票を待ってほしい」と弱々しく繰り返す。
　選挙戦では、猛追するジョコウィ氏への対抗心をむき出しにして焦燥感を募らせた。インドネシア社会でタブー視される民族問題に言及し、「ジャカルタは土着民族のブタウィ人の手に」と地元団体にアピール。開票後の会見では「ジャカルタはムスリムが多数派だ」と述べるなど、プロテスタントのバスキ氏攻撃を展開した。
　公式な集計結果は近日中に発表され、選管が決選投票の期日を決定する予定。

■敗退候補の弁
　ヘンダルジ・スパンジ氏　「（支援者らに）感謝している。私は最大限に努力した。より良いジャカルタを目指す取り組みは十分にできたと思っているが、これが結果だ」
　アレックス・ヌルディン氏　「結果を受け入れ、なりゆきに身を任せる。ファウジ、ジョコウィ両候補の健闘をたたえたい。投票してくれた有権者と選挙運動を支えてくれたスタッフに感謝する」
　ファイサル・バスリ氏　「（アレックス候補の得票数を上回り）ゴルカル党とそのほかの１７支持政党を負かすことができた」
　ヒダヤット・ヌルワヒッド氏　「（開票速報で決選投票進出が難しいことが分かり）内部の得票数の計算も開票速報も終わってないし、選挙管理委員会も結果を発表していない」