KPKが警察捜査へ 対立緊迫化で調停乗り出す ユドヨノ大統領

 国家警察が独立捜査機関・汚職撲滅委員会(KPK)を急襲し、警察幹部の汚職事件の捜査を担当していた出向捜査官に逮捕状を突き付けるなど、両者の対立が緊迫化したのを受け、ユドヨノ大統領は8日、KPKが同事件を捜査し、警察は他の汚職事件を担当することで両者が合意したと明らかにした。捜査機関への干渉回避を理由に静観してきた大統領が両者の調停に入り、対立緩和を図ったが、汚職の巣窟と批判される警察内部の不正追及には是々非々の構えを示すにとどまった。

 ユドヨノ大統領は同日午前10時―午後2時、中央ジャカルタの大統領宮殿で、KPKのアブラハム・サマッド委員長、バンバン・ウィジョヤント副委員長、ティムール・プラボド国家警察長官と協議し、午後8時、記者会見を開いた。
 大統領は、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)などで「大統領は問題を放置している」などと批判が噴出しているとの認識を表明。「近年(汚職捜査の対象となった)政府機関とKPKの対立が激化する度に、大統領が調停役を務めてきた」と強調した上で、今回の騒動に対し五つの措置を講じると説明した。
 まず、ジョコ・スシロ前国家警察交通局長(現警察学校校長、休職中)が関与した運転教習機材調達事業の汚職事件は、KPKが捜査すると言明。内部捜査と称して、KPKの捜査妨害を展開してきた国家警察に対し、同事件の捜査を移譲するよう指示した。
 しかし、国家警察は別の汚職事件の捜査を担当するとし、警察幹部の関与が疑われている他の汚職事件は、あくまで警察が引き続き捜査していくと説明。KPKだけでなく、警察の捜査権限にも配慮する姿勢を示した。
 警察からKPKに出向している捜査官の処遇をめぐる問題は「出向者の任期は最高4年で、1回の延長が可能」と定めている政令を改定し、1回の任期は4年にすると発表。「KPKの職務に支障をもたらすため、任期途中で出向中の捜査官を連れ戻すことは禁じる」と明言した。
 上官の警察幹部の汚職事件を担当した出向捜査官の1人で、警察から逮捕状を突き付けられたノフェル・バスウェダン氏の処遇については「過去の刑事事件を追及する適切な時期とは言えない」と指摘。憲法で保障された「法の下の平等」を尊重し、KPKに出向中の捜査官であっても捜査を受けるべきだとしながらも、KPKに乗り込んだ警察の措置は「不適切だった」と述べた。
 一方で、国会によるKPK弱体化の動きと非難が集中している改正汚職撲滅法案について、大統領は「法改正はKPKの権限強化や効率化を規定する場合に限り、議論する」との姿勢を表明。KPKが大統領の出身母体の民主党幹部を次々と摘発し、政権支持率低下を引き起こしている中、あくまで汚職撲滅を推進する方針に変わりはないことを強調した。
 最後に大統領は「汚職撲滅はKPKだけでなく、警察や検察も協調し、好調な経済で獲得した国家資産が盗み出されることのないよう努めていくべきだ」と呼び掛けた。

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