経済回復と税還付問題
先日、地元メディア(18日付のコンタン紙)の記事に、財務省租税総局(DGT)の情報として、今年1月から2月の税還付額が3割近く減少しており、「景況が回復しているため」という当局のコメントが掲載された。
その要因を見ていくと、税還付が減少した総額約26兆ルピアの内、ほとんどが付加価値税(VAT)の還付で約22兆ルピアとなっている。確かに景況は回復しているものの、より直接的には、「コロナ禍対策として実施されてきたVATの早期還付の取り扱いが昨年末で終了したため」という当局の分析が当てはまるように思われる。
さて、インドネシア最大の日系コミュニティーであり、商工会議所と日本人会の役割を兼ねるジャカルタ・ジャパンクラブ(JJC)課税委員会が昨年11月に内部で実施した「税務問題アンケート」では、「VATが還付ポジションとなっている」日系企業は約3割(31%)だった。
そのVAT還付ポジションの企業数を上回ったのが、「法人税が還付ポジションとなっている」と回答した日本企業で、回答企業の内33・3%を占めた。「還付ポジションになる一番大きな要因」としては、「輸入時の前払い法人税(PPH22)」が52%とトップで、「月次の前払い法人税(PPH25)」が26%とこれに続いた。
この輸入時の前払い法人税も還付申告をすれば、税務調査が入る仕組みとなっており、アンケートでは、「2021年に税務調査を受けた」企業は57%と過半数で、その理由として「還付申告を行ったため」と回答した企業が83%と圧倒的トップである。また、「21年に法人税の還付を受けた」企業の内、税務調査の結果還付された企業(申請後1年以内に還付)は37%と低く、税務調査以降の税務裁判等で還付されたケース(申請後1年超に還付)は63%と高い。限られた期間内での税務調査では提出されなかった資料が税務裁判で提出され認められるケースもあろうが、一旦還付申告を行うと1年超還付が見込めないケースが多いことになる。
JJC課税委員会では、輸入時の前払い法人税について、輸入商品毎に決められた税が企業の実際の利益を上回る場合があり、そういった商品を取り扱う企業にとって毎年還付申告と税務調査がセットとなって様々なコストが課せられている、とかねてより当局に主張している。適用除外を申し入れることもできる制度となっているが、今月行われた課税総局国際課税局との対話において、そもそもの輸入時の前払い法人税の税率引き下げを改めて申し入れた。
さて、最近の経済と前払い法人税の関係としては、コロナ禍が落ち着きインドネシアの消費や輸出が順調に回復する中で、原材料輸入を含めた全体の輸入額も増加傾向にある。マクロで見れば、経済が活性化することは喜ばしいが、企業の税務担当者にとっては、輸入が増えれば前払い法人税も増えてしまうため、またアタマの痛い問題を抱えることになる。課税委員会としては、引き続き日系企業が直面する問題の改善に取り組んでいきたい。
なお、アンケート調査の全48問の回答結果については、JJC法人会員専用ウェブサイトに掲載を行っているので、今後の税務実務の参考にしていただきたい。 JJC課税委員長 情野将弘(三菱商事ジャカルタ駐在事務所)