日本式の教育を伝授 イオンディライト 清掃を通じ意識向上

 施設管理大手のイオンディライト(東京都千代田区)現法は、利用者が通る際は清掃中でも手を止めてあいさつをするなど清掃スタッフに日本式の仕事への取り組み方を浸透させている。新型コロナ禍では、日本では一般化した清掃後の残留雑菌を数値化するATP検査も取り入れており、日本式を徹底する清掃研修の現場を取材した。

 研修では掃除道具の使い方はもちろん、利用者がトイレや通路などを利用する際、立ち止まってあいさつをするなどの内面や髪・服装といった外面も指導。また、忘れ物があった場合はどうするかなど座学も取り入れる。研修は10日間実施され、最終日には筆記・実技テストが行われる。
 取材した研修2日目のクラスには24人が参加しており、研修生のメラさん(21)は「以前はアパートのハウスキーピングとして働いていたが、道具の名前や機能など知識不足なことが分かった」と清掃知識をもっと学びたいと言う。
 2日目のクラスでは、モップがけを部屋のどこから始めるかや、ごみの散乱を防ぐ道具のテクニックなどを重点指導され、研修生たちの表情は混乱していた。
 幼少期から学校で掃除の経験を積む日本人ならすぐに意図が理解できるが、習慣が異なるインドネシア人はなかなか理解が難しそうだった。
 8人が参加した研修8日目のクラスで、前職は工場勤務だったというマウラナさん(28)は、「自室でも公共の場でも、汚れていたら片付けるようになった。前は気にしなかった。今は道にごみを捨てることもしない」という。研修を通して意識改革が起こっているようだ。
 教育マネージャーのイラワティさん(32)は「たとえ小さくても、ごみはごみだと意識を高めるのは難しい。なじみのない掃除道具名を覚えさせるのにも一苦労」と語った。
 研修では掃除道具名を覚えやすくするため、研修生の名札を掃除道具の名前にするなど、一工夫を加えていた。イラワティさんによると「友だちの顔を覚えるから、道具の名前も覚えるようになる」と言う。
 だが、「清掃業に携わるのは職業選択の最後に出てくるもの。しかし、教育は厳しくしなければならない。研修生が離れていかないように緩急をつけるのに苦労する」と苦笑いした。
 同社は、重点対応すべき清掃作業を確認するなど契約先の形態に応じたヒアリングを定期的に実施。従業員派遣後も現場研修を行うなど顧客定着率は競合他社より高いという。(青山桃花、写真も)

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