脱炭素化へ日系企業の底力

 「20カ国・地域首脳会議(G20サミット)」を控えた今月11日、バリ島ではビジネスサミット(B20)などビジネス関係者による一連のイベントが開催され、筆者もバリ島入りした。
 当局発表では、この日から警備体制を本格的に強化。サミット会場がある規制エリアに立ち入るには、G20ステッカーを交付された登録車両である必要があるという。ところが、政府側の準備が間に合わず、ステッカーをジャカルタで事前入手できない。現地の状況を調べるため、スタッフに前日入りしてもらうなど、やきもきしながらの現地入りとなった。
 それがどうだろう。ふたを開けてみれば、この日の段階では警備体制がまだ立ち上がっていない。人も荷物もチェックされることなく、すんなり会場入りできてしまい、少し拍子抜けした。G20開催に向けて警備は徐々に厳しくなったが、何事もまずは一気呵成に準備して動き出し、そこから完成形に近づけて最終的に目的を成し遂げる「インドネシアらしさ」を体感することができた。
 さて、話を戻そう。この日に出席した会合はB20のサイドイベント「ネット・ゼロ・サミット」である。国連開発計画(UNDP)のインドネシア事務所常駐代表、下村憲正氏によるスピーチでは大きな会場に立ち見者も出て、それでも入りきれない人がいるほど熱気を感じた。
 B20のテーマは「Industrial Decarbonization at All Cost」。いかなる犠牲を払っても産業の脱炭素化を推進するというこの強いメッセージが公式テーマになるほど時代は動き出していると感じずにはいられない。
 UNDPとインドネシア商工会議所(KADIN)による日本との協力をテーマとしたセッションでは、ジャカルタ・ジャパンクラブ(JJC)の木村亨理事長が今年度にJJCが設置したカーボンニュートラルタスクフォースを紹介。「日系企業は『実現可能かつ持続可能な』エネルギー・トランジションや脱炭素化を既に実施しており、今後、インドネシアに協力する用意がある」と呼びかけた。
 これを受けて日本貿易振興機構(ジェトロ)ジャカルタ事務所の松田明恭次長が、日系企業165社がインドネシアで457件のカーボンニュートラルに資するプロジェクトを行っていることなど具体的な事例を紹介した。
 同タスクフォースメンバーのアビームコンサルティングによる試算によれば、これら日系企業の協力が生む二酸化炭素排出量の削減効果は2022年時点で年間3000万トン。家庭も含めたインドネシア全体の排出量の約5%に相当する規模になる。さらに2060年時点の延長推計では2億5000万トンの削減が見込まれるという。
 一定の前提条件を置いた推計値であり、幅をもって評価すべき参考値ではあるが、それでも日系企業によるインドネシアに対する足元の貢献と将来の協力の実力を示すインパクトのある数字であると考えている。
 ネット・ゼロに向けた動きは今後も続いていくと想定されるが、JJCとしては引き続き、脱炭素化実現に資する日系企業の製品・サービスを紹介するビジネスカタログをまとめたジェトロとも協力しながら、日系企業によるインドネシアへの貢献の可視化、サポートを進めていきたい。
 JJC事務局長 小倉政則(日本商工会議所・東京商工会議所より出向)

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