独自に電子書籍端末 コンパスグループが開発 2014年発売、1冊7000ルピアから 豊富な保有書数 配信網も構築 少額決済に対応 端末普及は未知数
インドネシア最大のメディア複合企業体であるコンパス・グラメディア・グループが電子書籍リーダーの開発に乗り出す。端末開発から配信プラットホーム、決済機能などをすべて手掛けるビジネスモデルは、アマゾンやアップルなど米大手企業式の戦略。販売コンテンツは傘下の出版社が豊富に有しており、特に人気の高い新刊の販売のハードルも低く、デジタル書籍市場での一人勝ちを狙う。一方、タブレット端末やスマートフォンの普及率、無料コンテンツの利用に慣れている消費者の取り込み、読書文化が根付いているとは言い難いインドネシアの状況などが課題になる。1冊分の販売価格は安価なものでは7千ルピア(約60円)ほどに設定する予定。同グループの広報担当によると、端末の発売は2014年ごろになる見込みだ。(岡坂泰寛)
端末の開発費として460万ドル(約3億6千万円)を投資。同グループは現在、技術開発に向けて外国企業数社と提携交渉を進めており、近く正式に契約する見込み。同社の広報担当はじゃかるた新聞に対し、販売価格について「多くの消費者に受け入れられる額」と述べるにとどまり、発表時期は明言しなかった。
電子書籍を販売する場合、商品単価が少額になるために、従来の決済システムを使用すると販売単価に占める手数料の割合が相対的に高くなる。そのため、同グループは少額の決済に適した新たな決済システムを構築することで、消費者に広く受け入れられる販売システムの構築を目指す。オンライン決済以外にも、銀行振込や電子マネーでの支払いにも対応する予定。
インドネシアでは読書文化が先進国に比べて依然として浸透しておらず、東南アジアのほかの国に比べても高いとは言えない。書籍市場における教科書販売の市場規模の割合が他国に比べて高いのもその表れの一つだ。同社の広報担当は「インドネシアでは年々、知的な娯楽産業の一つとしても読書文化が育ちつつあり、今後は確実に市場拡大が見込まれる」とコメント。端末の普及に自信を見せた。
■言語表記で有利
電子書籍の普及には、端末の普及や電子書籍のタイトル数、価格の妥当性や支払いの方法の利便性によって大きく左右されると言われている。通信会社や印刷会社、書店などが提携して配信プラットホームを構築している複雑な収益構造の日本式とは異なり、同グループのみで開発を進めることで、販売タイトル数や値段の妥当性については早期に消費者から支持を得られる可能性がある。
しかし、スマートフォンやタブレット式端末の普及が進むことで、独自開発の端末の普及が進むかは未知数だ。
例えば、中国や韓国、インドでは現地の言語への対応の難しさもあり、自国内で端末が多数開発され始めている。しかし、インドネシア語の場合は英語と同様にアルファベットを使用し、米企業が販売する端末が利用しやすいため、独自端末の優位性は低い。
同グループは、有力紙コンパスをはじめ、全国各地の地方紙、タブロイド誌、雑誌など61誌を所有。電子版「コンパス・コム」の1日の訪問者数も1800万人に達するなど事業拡大を進めている。昨年には、一度は経営難で撤退したテレビ業界に再挑戦し、「コンパスTV」を開局。地方局に番組を卸売りし、放送網を構築する戦略で挑んでいる。
出版や印刷、ラジオ、イベント会社など出版・マスコミ業界を包括。現在はビジネス・ホテルなど不動産、リゾート産業などにも参入している。