人生って面白いですね スマラン 酒井冨久子さん 在外公館長表彰
南ジャカルタの日本大使公邸で15日、令和4年度在外公館長表彰を受賞した酒井冨久子さん(78)に表彰状の授与式が行われた。表彰状は日イ両国の友好強化や理解促進などに長く貢献した人などへ授与される。
中部ジャワ州スマラン市在住の酒井さんは23年間に渡って日本食レストランを経営しながら、終戦直後に起きたスマラン事件で殺害された邦人の遺族らを支え、慰霊碑として建立された「鎮魂の碑」を20年以上もの間、維持管理を続けている。
表彰式で金杉賢治駐インドネシア日本大使は、「インドネシアが独立に向かう混乱期の中で両国の国民が犠牲になった。日本とインドネシアは強固な友好関係を結んできたが、スマラン事件を決して忘れてはいけない。日本人にもこの事実を知ってほしい。碑の維持管理が困難になってきている中でも維持管理して頂いていることに感謝したい」と祝辞を述べた。
これを受けて酒井さんは、「殺害された邦人の遺体は、刑務所横を流れる川に流された。スマラン市政府はその川の河口に慰霊碑を移動するよう命じた。悲しい思いもしたが、こんな立派な賞を頂けるとは本当にびっくりした。人生って面白いですね。どん底まで苦労もしたけれど、こんなに大きなものがもらえた」と表彰状を受け取った際は感涙にむせたが、最後には笑顔を見せた。
1945年10月、日本軍が保有する武器の引き渡しなどを巡ってインドネシア側と武力衝突するいわゆるスマラン事件が勃発。市内のブルー刑務所に監禁された邦人の民間人らが房内で機銃掃射を浴び、200人以上の死者を出した。