蘇った伝統絵巻物 坂本さん研究の「樹皮紙」 技術衰退 100年ぶり再現 きょう一般公開 認知度向上へ展示会開催

 紙の専門家の坂本勇さん(64)が研究する、3500―4千年前からインドネシアに伝わる伝統文化「樹皮紙」「樹皮布」の展示会が始まり、南ジャカルタ・ダルマワンサ・ホテルの「グラハ・ビマセナ」で14日、招待客に公開された。最終日の15日に一般公開される。世界的に有名な古代エジプトの「パピルス」を凌駕する歴史と現在への連続性を持つ技術を保存しようと研究を続けてきた坂本さんにとって「一つの区切り」になるという展示会では、現在では廃れてしまった古来の高度な伝統技術を再現した樹皮紙の展示物が並んでいる。

 「樹皮」というと薄茶色くごわごわとした材質を想像してしまうが、会場に並ぶ展示物は柔らかい白色の生地に鮮やかな色彩のモチーフが描かれている。柔らかい白色は原材料のカジノキに由来。南国が原産のカジノキの葉は諏訪神社の神紋に使われるなど、日本でも古代から神事の重要な場面で用いられており、神秘性を持つカジノキ由来の白色の生地が古代から世界の広い範囲で重用されていたとみられている。
 展示物はバリ島カマサンの技術者が製作。ヒンドゥーのモチーフや伝統絵巻物「ワヤン・ベベル」の一場面を描いている。安価で簡素な布の流入により、現在のバリでは樹皮紙を作る技術者もそれを使用する技術者も途絶えた。今回、現在でも技術が残る中部スラウェシ州ロレ・リンドゥ国立公園のバダ渓谷の職人が作った樹皮紙を使い、100年以上の時を超え、本来のバリの伝統文化をよみがえらせた。
 現在では大量生産が可能な布に伝統のモチーフを描いているバリの技術者たち。初めて樹皮紙を使用し、「失敗できない緊張感があり、一回一回が真剣勝負。モチーフを描くという本来の聖なる仕事をしているという思いがわいてくる」と感想を話しているという。
 今回、絵巻物などに使われていた紙を再現することに成功しており、今後は本来使われていた天然の絵の具の再現が課題。「これまで気持ちがあってもできなかったものが一歩ずつよみがえってきた」。今年8月でインドネシアの紙研究にかかわり初めて15年になるという坂本さんは、従来の紙の歴史の通説に修正を迫る世界的に貴重な樹皮紙の伝統技術保存へ、気持ちを新たにしている。
 展示会では紙作りを体験できるワークショップも開催。坂本さんら専門家によるトークショーも行われる。開館は午前10時から午後6時まで。入場無料。

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