航空業界におけるウイズコロナ
世界がウクライナ危機で騒然となる中、依然新型コロナウイルスは私たちの周囲に存在する。今回は最も影響を受けた業界のひとつ、航空業界の実情を報告したい。
まさに旅客需要蒸発である。2020年の世界の国際線旅客数はコロナ前から約8割がほぼ数カ月で消滅するという異常事態となった。弊社のジャカルタ線も、19年度は東京に毎日3往復していた便数が、一時は週4便運航にまで縮小を余儀なくされた。
日本に向かう当国の人数縮小も顕著で、日本政府観光局の発表では当地から日本を訪れた外国人数は21年と19年比較で98・7%減となった。それでもジャカルタにおいて運航を維持する要素として、当地邦人の安全・生活を考慮した観点と、北米線旅客と貨物需要が支えてくれた。
日本では国際線到着後、入国せずに他の国際線に乗り継ぐことは可能で、シンガポールや台湾ではそれら乗継も一時的に禁止となったことで、搭乗客のほとんどは北米線乗換えの方、という時期もあった。
航空貨物において、中国で海上用コンテナが長期に滞留したり、北米の陸上輸送が混乱し、世界の航空貨物需要は一気に高まった。当地は日本向け航空貨物輸出増加が顕著で、参考値(WACD=World Air Cargo Deta)ながら、21年対19年比較で同輸出は137%の伸びであった。ただし、他のアジア各国も同じ傾向で、ベトナムの同輸出量は250%超であった。今後航空貨物需要は徐々に沈静化すると見られ、JJC運輸グループで当地に働き掛けているとおり、広く総合物流という観点で当地は成長余地を残している。
本年に入り世界のコロナ感染状況は落ち着きを見せ、アジア各国の政策がウイズコロナを打ち出したことで、出口が見えて来た感がある。日本政府も外国人への留学・就労ビザ交付を再開したことで、3月から日本への渡航を待ちわびていた多くのインドネシア人が順次日本に渡航している。ウイズコロナの時代でこうした流動をさらに加速する上で、私見として数点指摘したい。
まずはブースター接種の一層の拡大と、適切なワクチン完全接種者にはPCR検査受診を免除して移動の際の費用や手間、ストレスを軽減することが求められる。また、訪日観光需要を呼び戻すため、ワクチン種別による入国検疫措置をWHO指針等に基づいて対応することで、特に東南アジアからの訪日観光需要の回復は、現在の円安もあり、直ぐに戻ると確信している。これらの措置は日本から海外に向かう流動も促進するもので、日本と各国が相互に同条件で交流を活発化することが理想と考える。
最後に、航空業界でもカーボンニュートラルの取組みが急務となっている。欧州では「飛び恥」と言われるほど、飛行機移動が環境に大きな負荷を掛ける象徴と捉える人たちもいる。今後こうした考え方が一層拡大すると想定され、日本やアジアの航空業界にも影響必至である。この分野も日系キャリアの技術や知見で当地やアジアに貢献することが期待されている。錦織暁 全日本空輸ジャカルタ支店長(JJC運輸グループ代表理事)