来たるべきインフレ

 欧米先進国で進むインフレ対策として、中銀の金利引き上げスタンスが強くなっている。特に米国では、先月のFRB(連邦準備理事会)会合で、強いタカ派スタンスが鮮明になった。具体的には、金融政策面では据え置きとした一方で、「間もなく」利上げ開始が妥当とのメッセージを発し、3月の初回利上げを事実上予告した。市場では利上げのペースに関し、3月利上げが0・5%になる可能性、あるいは年内に7回あるFOMC(連邦公開市場委員会)の各会合で利上げする可能性も排除しなかった、と解されている。
 かまびすしく金利引き上げが言われるようになったのは、わずか数カ月前だが、すでにこのピッチでの利上げが予想されている。1年前のFRBは、「インフレ傾向は一時的。サプライチェーンの混乱も年後半にかけて落ち着く」というスタンスで、2023年にかけて金融緩和を継続する予定だった。にもかかわらず、ここまで急速にインフレが進んだという事態は、通常ではない。
 FRBが重視するインフレと雇用データを見ると、後者は失業率4%とコロナ前に記録していた低水準に戻っている。ただ、金融緩和下の資産価格上昇(特に株式)やコロナ対策で政府が増やした国民への現金給付の効果は顕著で、これだけサプライチェーンの復旧が望まれる中でも、まだ現場の雇用逼迫が続いている。つまり、働き手が労働市場に戻ってこない状況が継続している。加えて、米国も中国も国内対応重視で、結果的に「脱グローバル化」に向かいつつあることが、部品や商品の供給不足を長引かせ、インフレを高めてしまっている点も指摘されている。
 一方、需要面は、米国のIT投資や消費の指標は順調で、景気は順調に拡大してインフレ率は7%へと上昇し続けている。要は、現時点だけ切り取ってデータを見ると、「21年前半にはテーパリングを終了し、利上げを開始すべきだった」とも考えられ、後手に回りつつあるFRBの状況が、冒頭の焦りに繋がっていると思う。後から分析して評論的な意見をいうのは容易だが、デルタ株対応で四苦八苦した21年を思うと、現実はそんなに簡単ではない、とも思う。
 米国で7%の高インフレ率は約40年振りだが、当時を振り返るとかなり酷い状況だった。1980年前後はオイルショック後の不景気で、米国インフレ率は一時15%近くまで達した。ここで当時のボルカーFRB議長は、信用収縮と利上げにより一気にインフレ率を1桁台まで落とした。一方で、82年当時の急激な米国の金融引き締め策は、メキシコをはじめとした中南米諸国の債務利払い上昇につながり、債務不履行(デフォルト)を引き起こしてしまった。やはり、大きく進んだインフレを抑えるのは容易ではなく、荒療治には副作用が伴うことを、過去は伝えている。
 翻ってインドネシア。政府目標である2〜4%を下回る物価水準が続いていたが、1月は2・2%へと大きく上昇した。奢侈税優遇措置の削減などが理由とされるが、米国で起こっている需給ギャップの継続は、多かれ少なかれどの国も共通のものとも思う。石油価格の上昇が、政府の補助金によりさほど生活物価を直撃しないといったインドネシア固有の要因はあるものの、米国で起こっている高インフレが、インドネシアで起こらないとは思わない。インフレ対策が短期では終わらない可能性は、意識しておきたい。(三菱UFJ銀行ジャカルタ支店長 江島大輔)

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