モスクで「ムスリム選ぶべき」 ファウジ陣営、対抗馬攻撃 首都知事選
ジャカルタ特別州知事選決選投票(9月20日投開票)をめぐり、ムスリムであることを強調する戦略をとるファウジ・ボウォ現州知事陣営が、対抗馬のジョコ・ウィドド・ソロ市長とペアを組む、華人でキリスト教徒のバスキ・チャハヤ・プルナマ副知事候補を攻撃する姿勢を強めている。これをきっかけに、インドネシア社会でタブー視されてきた「民族、宗教、人種、社会集団(SARA)」を、選挙で論点にするのが妥当かとの議論が巻き起こっている。
地元メディアによると、ファウジ氏は27日、中央ジャカルタ・クマヨランのモスクでブカ・プアサ(1日の断食明け)を祝った。キアイ(イスラム指導者)のファフミ・アルブコリフ師は、ファウジ氏らの前で信者に対し「ムスリムは同じ信仰を持つリーダーを選ばなければならない」と発言。「もしムスリム以外の人物がリーダーになったら、ジャカルタはパダンのように地震や洪水に見舞われるだろう」と強弁した。
これがフェイスブック、ツイッターなどを通じて、SARA問題をめぐる議論へと発展した。憲法と国是のパンチャシラ(国家五原則)はすべてのSARAを尊重することを規定。インドネシアの報道倫理ともなっており、宗教対立をあおる言動を伝えることは自粛する傾向にある。批判の矢面に立たされたファウジ氏は「(選挙に)人種や宗教を取りざたすることを遺憾に思う。パンチャシラに従い、すべての市民を尊重しなければならない」と火消しに掛かった。
しかし、ファウジ陣営の1人で、国民的人気を誇るダンドゥット歌手のロマ・イラマ氏が陣営を擁護。29日夜、西ジャカルタ・タンジュン・ドゥレンで行われた礼拝にファウジ氏らと同席し、「選挙戦でSARAを問題視するのは妥当。いま私たちは開かれた、民主主義の時代を生きている」と反論した。
ファウジ氏は同地区のイスラム団体とモスクに多額の寄付をしており、戦略的にイスラムを強調しているとみられる。
第1回投票直後の会見で「ジャカルタはムスリムが多数派の土地だ」と暗にバスキ氏を攻撃する姿勢を示した。
さらにムスリムの神聖な月であるラマダン期間中、 2位通過のファウジ陣営は、キリスト教徒との隔たりを強調し、ムスリムであることを強調する候補への共感を生み出すことを狙っているとの指摘もある。一方、ムスリムのジョコ氏は30日、小巡礼(ウムロ)から帰国し、スカルノハッタ空港で「ジャカルタ市民を宗教や人種問題で惑わすことは倫理的ではない。市民が自ら判断を下すだろう」と語った。
選対幹部のデニー・イスカンダル氏は、テレビのトークショーにペチ(イスラムの帽子)をかぶって出演。「ジョコ氏はキリスト教徒」などと事実に反するうわさも広まっていることなどに反論し、ファウジ陣営をけん制した。