労働者から悲痛の声 デモ最前線に邦人の姿も
デモはほぼ平穏に行われたが、賃金や派遣問題に対しては、依然として労働者から悲痛の声が上がっていた。
「経済成長は誰を幸せにしたか」
西ジャワ州ブカシの東ジャカルタ工業団地(EJIP)。デモの最前線で、トラックの荷台に乗った労働者側の男性が拡声器を通じて叫んでいた。「労働者の生活向上を目指そう」と呼び掛けた。
デモに参加していた韓国系リモコン製造工場勤務のレニー・マルニナさん(28)は、働き始めて1カ月。同社は賃上げを凍結していると言い、「このままではいつまで経っても生活が良くならない」と嘆く。
ユリアンティさん(26)は、派遣労働者として働いて5年目。「なんとか人材会社をなくして。給料のピンハネにはうんざり」。月収は最低賃金を下回る149万ルピアで、「まずは給与水準の高い契約社員になりたい」と嘆く。
ストで労働者側が要求した派遣・請負労働問題の改善。従業員をすべて正社員か契約社員として雇っている企業も増えてきているが、各企業で取り組みに温度差があるのが現状だ。
労働者による行進などデモの最前線には、団地内にある日系企業の日本人駐在員の姿もあった。
インドネシア人従業員とともにデモ隊の要求内容に熱心に耳を傾けていたのは大手日系企業の日本人現法社長。トラックの上で演説していたデモ隊の1人は同社長を名指しで呼び、「友人の日本人経営者にわれわれが何度も日系企業に裏切られてきたということを伝えてほしい」と呼び掛ける場面も。
オートバイに乗ったデモ隊の車列を携帯電話のカメラで撮影していた包装資材企業勤務の駐在員は「事前に従業員からストについて説明があった」と話し、大きな心配はしていなかったと明かした。(岡坂泰寛)