「アジア政策の土台」 米国務長官が来イ 安保・経済の重要性強調 南シナ海問題は貢献評価 マルティ外相と会談
マルティ・ナタレガワ外相は3日夜、同日来イした米国のクリントン国務長官と中央ジャカルタの外務省で会談した。米国がオバマ政権下でアジア太平洋重視を鮮明にする中、「両国の包括的パートナーシップは、米国のアジア太平洋地域に再び関与するという政策の土台だ」と強調。「インドネシアのみならず、地域や世界にとって非常に重要だ」と評価するインドネシアの堅調な経済成長を「貿易と投資を通じて支える」と述べ、経済協力も一層強化する方針を示した。(関口潤)
午後6時50分から始まった会談は予定の30分を大幅に超える約1時間40分にわたって行われ、包括的パートナーシップにかかわる政治・経済など広範な分野の二国間協力や、南シナ海問題、シリア情勢、朝鮮半島情勢などを含む国際的な課題について意見を交わした。
マルティ外相は会見で、第3回共同委員会会合を今月中旬に米ワシントンで行うことから、2週間後にも両氏が顔を合わせることを挙げ、「このような頻繁な協議は二国間関係の強固さを表している」と説明。
「アジア太平洋の平和と安定の維持は地域の繁栄と発展の促進に寄与する」と述べ、著しい経済発展の基礎となる安定の維持の重要性を両国が共有していると強調した。
中国と東南アジア諸国連合(ASEAN)の間で緊張が高まり、今回のクリントン氏のアジア歴訪の焦点の一つとなっている南シナ海問題では、中国が難色を示しているとされる南シナ海問題の法的枠組みである「行動規範」について「協議の進展が重要であるとの認識で一致した」と語った。
クリントン氏は、会見で南シナ海問題に最も長い時間を割いた。「地域の各国が、強要、脅迫、威嚇、実力行使なしで協調して、争いを解決すべきと信じている」と述べ、軍事力を背景に海洋進出を活発化させている中国をけん制。インドネシアがASEAN諸国との間で南シナ海問題に関する六つの基本原則を取りまとめたことを評価した。
「世界はインドネシアを世界第3の民主主義国として、地域の民主主義と人権問題をリードしていると評価している」と前置きした上で、パプアの独立運動が絡む衝突や宗教少数派への暴力事件に絡んで欧米諸国が非難しているインドネシアの人権問題に関して「少数派への差別はあってはならない」「自由と寛容を促進しなければならない」と指摘した。
英字紙ジャカルタグローブ記者の「パプアで人権問題を抱えている国になぜ兵器を売るのか」という厳しい質問に対しては、「インドネシアは安全保障を強化する権利を当然持っており、反テロ対策では緊密に協力している」と述べ、両国の軍事協力の正当性を主張した。
クリントン長官はアジア歴訪中で、4日にはユドヨノ大統領、ASEANのスリン・ピッツワン事務局長と会談。同日、中国へ出発する。6日には米国務長官として初めて、2002年にインドネシアから独立した東ティモールを訪問する。