国立公園の協働管理実現へ プロジェクト成果を発表 JICAと林業省

 今月末に終了する国際協力機構(JICA)と林業省などによる「生物多様性保全のための国立公園機能・人材強化プロジェクト」の最終ワークショップがこのほど、西ジャワ州ボゴールのサンティカホテルで開かれた。林業省の林業教育研修センター(CFET)のワルデマール・ハシホロン講師らが国立公園の協働管理に向けた管理職員の研修、モニタリング、地元住民との合意書策定の成果を発表した。
 同プロジェクトの研修では、環境省に出向しているJICA専門家の櫻井洋一さん、西田幸次さん、ボゴール農科大学(IPB)の教官などが講師を務めた。三年間で十二国立公園から九十四人の職員らと四十八人のステークホルダー(地元住民、自治体などの利害関係者)が西ジャワ州ボゴールにあるCFETでの研修に参加。十二のうち四つの公園で、自治体や住民と公園側の間で協働管理の合意に至っている。他の八つも合意に向けて協議中だという。
 しかし今回研修を受け、合意書の策定に携わったのは十二の国立公園の広大な土地の一部を管理する職員のみ。林業省は今後も、研修を受けた職員を講師として他の管理区域や今回研修を受けていない国立公園職員の研修を行っていく。職員と地域住民との協力体制を広めて、全国に五十カ所ある国立公園を管理していく方針だ。

■議論、実践重視の研修
 同プロジェクトで重要視されたのは「議論」と「実践」。地域により事情や背景が異なるステークホルダーと協働管理を行っていくには、現場を知っている職員それぞれが地元住民と話し合い、課題について考え、解を出さなければならない。
 座学では研修生同士の議論を重視。また、プロジェクトの初期段階では実際にグヌン・ハリムン・サラック国立公園で現地調査を行い、住民とともに生活し、地元住民が置かれた状況を理解することの重要性を学んだ。
 職員は研修後、それぞれの担当地域で一年間かけて、自然資源や住民の暮らし、文化などをモニタリングしそれを基に協働管理の合意書を関係者とともに策定した。職員が高圧的に接していたため住民が萎縮して意見が出せなかったり、逆に多くの要望がありすぎて調整が難航することもあったが、合意されていない管理区域でも協議が進んでいるという。最後は自治体や住民を含めた研修を行った。
 櫻井さんは「歴史や文化、生活様式が違う地元住民と一つのやり方で合意に至るのは容易ではない。そのため、住民との対話を通じて自ら課題を解決できるようにプログラムを組んだ」と話した。

◇「生物多様性保全のための国立公園機能・人材強化プロジェクト」
 近年、インドネシア政府は環境保全のため、国立公園指定を進めてきた。違法採取や採掘、密猟が絶えなかったこともあり、当初、国立公園内の住民を排除する政策がとられていたが、古くからその土地に根付く住民の権利も尊重し、政府は二〇〇四年に地元住民や利害関係者と協働管理していく方針に転換。地元との対話を通じて協働管理を実現する人材を育成する目的で、〇九年十月に同プロジェクトがスタートした。

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