邦人死亡、チカランで 密造酒、視力低下も
西ジャワ州ブカシ県チカランで密造酒を飲んだ、清水建設の現地法人に勤める40代の日本人男性が死亡していたことが29日、捜査当局などへの取材で分かった。在インドネシア日本大使館からは在留邦人に対し、密造酒の流通に対する注意喚起が出されていた。
調べによると、この男性と知人の日本人など5人が20日、チカランにあるアパートメントに集まり、密造酒を飲んでいたとみられる。関係者によると、このうちの一人とみられる日本人男性が日系クリニックを訪れ、体調不良や視力の低下を訴えていた。
男性の遺体はジャカルタ特別州の病院に移送され、当局が詳しい死因を調べている。
警察は関係した日本人などに話を聞いているが、密造酒を入手した経緯などについては明らかにしていない。地元警察や大使館は関係者の「個人情報を保護する」方針で一致、今後警察が公式発表を行うかは不明だ。29日時点で地元有力紙や放送局は報じていない。
■正規品のように販売
密造酒をめぐっては、日本酒や焼酎の瓶に詰め替えられたものや、洋酒風のラベルを貼ったものも出回っている。また写真投稿サイト「インスタグラム」や電子商取引(EC)サイトを通じ、正規品のように販売されているケースがあり、警戒が必要だ。
日系クリニック関係者は「(密造酒には)メタノールなど危険なものが混ぜられており、深刻な中毒症状を引き起こしたり、失明するおそれもある」と指摘した。
またヤシ酒「トゥアック」など「伝統酒」として個人が製造したものが、屋台で販売されている場合もある。
インドネシア政策研究所(CIPS)によると、2014~18年の5年間で、密造酒を飲んだことが原因とみられる死者は546人に上り、08~13年の232人からほぼ倍増している。
政府は酒に高い税を課しているほか、15年にはミニマート(コンビニ)でのアルコール飲料の販売を禁止にした。CIPSはこうした背景から、合法的に製造された酒よりも安価で手に入る密造酒が、一部の庶民にも広まっているとしている。(大野航太郎、高地伸幸)