レディ・ガガ、公演中止へ 警視庁が許可出さず 「国家のモラル脅かす」
来月三日に中央ジャカルタ・ブンカルノ競技場で予定されている米国人女性歌手のレディー・ガガのコンサートについて、ジャカルタ警視庁は十五日、「社会的、文化的に悪影響をもたらす」「国家の道徳を脅かす」などとして公演を許可しない方針を表明、初のインドネシア公演は事実上、中止に追い込まれた。
警視庁のリクワント報道局長は、音楽公演に関する異例の記者会見を開き、許可しない理由を説明。イスラム団体統括機関のイスラム指導者会議(MUI)など諸団体から寄せられた露出度の高い衣装や過激なステージパフォーマンスを問題視する反対意見を考慮したと明らかにした。
今年一―五月の間、ジャカルタで開かれた百二のコンサートのうち、外国人歌手は五十四を占めたと述べ、興行主との意見が合わずに、米国のヘビーメタルバンド、アベンジド・セブンフォールドが五月一日の公演をキャンセルしたが、公演許可を出さない措置は極めて異例であることを強調した。
これまでMUIは、レディー・ガガの衣装やステージについて「ハラム(イスラムに反する」と言明。強硬派団体イスラム擁護戦線(FPI)は「悪魔を崇拝する歌手」などとして公演拒否を訴えるデモを展開し、公演を強行した場合、解散させるなどと主張。これに同調する国会議員も出た。
MUIやFPI、イスラム政党の開発統一党(PPP)国会会派代表は、ユドヨノ大統領に宛てた書簡を国家官房に提出。ジュリアン・パシャ大統領報道官は十五日、「大統領が対処すべきことではない。国家官房はすでに書簡を返送した」と語った。
ティムール・プラドポ国家警察は「決定する前に警視庁は十分検討した」と述べ、ガマワン・ファウジ内相は警察の判断を「好ましい措置だ」と評価、「われわれは国民を有害なものから守らなければならない」と話した。
「インドネシアの文化に合ったコンサートを」との声に対し、これまで興行側はバティックを衣装に採用するようレディー・ガガ側に掛け合うとし、美術学校の学生がデザインした作品を募るなど配慮する姿勢を示していた。
チケットを購入し、ジャカルタ公演を心待ちにしていた女性会社員ユリ・ミルナさん(三四)は「苦労してとったチケットだったのに、がっかり。でもFPIの脅迫に不安もある」と肩を落とした。
ミニブログのツイッターでは「FPIが支配する国でよいのか」「多様性を認める国なのに」など、強硬派を非難するコメントが殺到。十五日夕には「FPI」「レディー・ガガ」がインドネシアで最もつぶやかれている単語となった。
レディー・ガガのジャカルタ公演は、四月から十月まで行われる世界ツアー「ザ・ボーン・ディス・ウェイ・ボール」の一環。日本では今月十―十二日、さいたまスーパーアリーナで公演し、約十万五千人を動員した。
興行主のビッグ・ダディ・エンターテインメントによると、ジャカルタ公演のチケットはすでに約三万枚を販売し、計四万人の動員を見込んでいた。チケットは、日本の九千―二万五千円に対し、四十六万五千ルピア(約四千円)―二百二十五万ルピア(約二万円)。
スナヤンのブンカルノ競技場のメインスタジアムを使用する外国人歌手の単独公演は初めてで、屋外で開かれる外国人単独公演の規模で、インドネシアでの新記録を打ち立てるとみられていた。