ロヒンギャ難民を保護 アチェ州 99人、地元住民が救助
インドネシア外務省は26日、アチェ州北アチェ県で地元住民らに救助されたロヒンギャ難民を保護する方針を示した。ただ、難民の地位を定める「1951年難民条約」に加盟していないインドネシアでは、難民の定住や就労は認められておらず、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)事務所による第三国定住の手続きを待つことになる。
複数のメディアによると、24日に救助されたロヒンギャ難民は99人。ミャンマー政府による迫害を逃れ、同国北部のラカイン州から難民の第三国定住を受け入れているオーストラリアへ向かっていたが、船が故障。北アチェ県沖で漂流しているところを地元住民が発見した。
地元当局は当初、新型コロナウイルスの感染の恐れがあるとして、難民の受け入れを拒否しようとしたが、これに反発した地元住民が救助活動を行い、近くの海岸に上陸させた。
インドネシア外務省による受け入れ決定を受け、救助された99人は28日、UNHCRによる難民認定を受けた。現在は、アチェ州政府が用意した施設に保護されている。地元当局は99人に新型コロナの迅速検査を実施し、全員が陰性であることを確認したという。
イスラム教徒の少数民族あるロヒンギャは、仏教徒が多数派を占めるミャンマーで迫害の対象とされ、UNHCRによると2018年3月時点で約80万人が難民としてバングラデッシュやマレーシアに避難している。
だが、ロヒンギャ難民を受け入れているバングラデシュ政府は4月、新型コロナウイルスの感染拡大により、同国南東部コックスバザールにあるロヒンギャの難民キャンプを封鎖。マレーシアも、新型コロナによる経済の減速を理由として、「これ以上のロヒンギャ難民受け入れは不可能」との見方を示していた。
地元メディアによると、ルトノ・マルスディ外相は17年9月、アウン・サン・スー・チー国家顧問らと会談、ロヒンギャ問題の早期解決を求めた。18年1月にはジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領がバングラデシュのロヒンギャ難民キャンプを慰問するなど、継続的な人道支援を行う考えを示してきた経緯がある。
インドネシア国内には、19年12月時点で1万3657人の難民がいるとされるが、国際移住機関(IOM)の支援を受けているのは約8300人に留まっており、それ以外の難民は、慈善団体などの支援に頼っている現状がある。(高地伸幸)