船員派遣を停止へ 中国漁船での死亡受け 海洋水産省

 中国漁船で働いていたインドネシア人船員4人が劣悪な労働環境下で死亡した問題などを受け、インドネシア海洋水産省は外国船へのインドネシア人船員の派遣を停止する方向で、関係省庁と調整する方針を固めた。同省担当者が8日、地元メディアの取材に対して明らかにした。 

 中国漁船で働くインドネシア人船員の置かれた労働環境をめぐっては、5月、サモア諸島沖で操業中に病死した船員の遺体を海に流す様子がユーチューブで公開され、国内外の関心を集めた。さらに、この漁船に乗っていた船員が韓国で下船後、約15カ月に及んだ勤務に対する賃金が約170万ルピアしか支払われなかったことや、1日18時間という長時間労働を強いられていたことなどを告発。同漁船に船員を派遣したあっせん業者の社員3人が、人身売買禁止法違反の疑いで容疑者認定された。
 これを受けて外務省は駐インドネシア中国大使を呼び出し、中国政府に抗議。さらにジュネーブの国連人権委員会(UNHRC)との非公式協議では、国外で働くインドネシア人労働者の人権が軽視されているとして、在ジュネーブ国際機関インドネシア政府代表部のハサン・クレイブ大使が懸念を表明していた。
 地元メディアによると、労働省の管轄下にある移民労働者保護庁(BP2MI)の担当者は、2018年5月~今年5月までの間で、外国漁船で働くインドネシア人船員が暴行を受けるケースが415件報告されていることを明らかにした。
 また、漁民の権利保護などを訴える団体「デストラクティブ・フィッシング・ウォッチ・インドネシア」も、昨年11月から今年5月までに、中国漁船で働くインドネシア人7人が暴行を受けて死亡、3人が行方不明になっていると発表。「サモア諸島沖の漁船の例は〝氷山の一角〟である」として、海外派遣の停止を求めている。
 ただ、在外インドネシア人の保護などを担当する外務省のジュダ・ヌガラ・ディレクターは10日、正規のライセンスを取得していないあっせん業者が、違法に船員を派遣するケースが横行していると説明。政府による船員派遣の停止は、問題の解決にはつながらないと指摘したという。
 海外へ船員を派遣するには、労働省か運輸省が発行するライセンスが必要となる。マラッカ海峡を通過中の中国漁船から5日、暴行を受けていたインドネシア人船員2人が脱出。リアウ諸島州で地元漁師に救出された。船員を派遣したインドネシア側のあっせん業者は、これらを取得していなかったことが、地元メディアの取材で明らかになっている。(高地伸幸)

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