スホイ機、残骸発見 ボゴール山中に墜落 搭乗者45人の安否不明
九日のデモ飛行中に消息を絶っていたロシア製小型旅客機「スホイ・スーパージェット(SSJ)100」の残骸を十日朝、西ジャワ州ボゴール県のサラック山(標高二二二一メートル)付近、チジュルック郡チペラン村で空軍ヘリが発見し、墜落を確認した。捜索隊は悪天候で現場に到達できず、搭乗者四十五人の安否確認はできていない。
SSJ100は九日午後二時三十三分以降、東ジャカルタ・ハリム空港を離陸した後、消息を絶っていた。同日から救命救助隊(SAR)、国軍らが捜索にあたり、十日午前、空軍ヘリがサラック山付近の崖で残骸を発見。スホイのロゴも確認した。
地元メディアによると、現場では残骸の大部分が焼失しており、細かい破片が散っている。
救助隊は陸路で現場を目指したが、山間で森林に覆われた斜面に加え、午後からの悪天候にも見舞われたため捜索活動を中断。十一日朝に再開する。
ハリム空港に対策本部が設置され、救助隊や政府関係者が対応に追われた。ロシアのスホイ社の代理業者トリマルガ・ルカタマ社は搭乗者数を四十五人と確認したと発表。内訳はインドネシア人の航空関係者や記者らが三十五人、ロシア人の航空技師やスホイ社関係者らが八人、米国人が一人、フランス人が一人。
デモ飛行は九日正午に一回目が行われ、ハリム空港周辺を三十分間飛行した。事故が発生したのは二回目。午後二時十一分に同空港を離陸し、西ジャワ州スカブミ県プラブハンラトゥで折り返す予定だった。
だが、同三十三分に同州ボゴール県アタン・サンジャヤ付近で、操縦士が通信で「高度を一万フィート(約三千メートル)から六千フィート(約千八百メートル)まで下げる」と伝えたのを最後に消息を絶った。サラック山の標高は二二二一メートルで、下げる予定の高度よりも高い。事故原因については国家安全運輸委員会が究明する。
国際協力機構(JICA)専門家で、インドネシア運輸省で「航空安全政策向上プロジェクト」のプロジェクトリーダーを務める安田弘氏は「現状では情報が少なく原因特定は難しい。ただ、考えられる事故原因は三つある。旅客機の機器の故障か、パイロットの操作ミス、あるいは管制の指示を受けている場合は、管制官が指示を誤った可能性が考えられる」と話した。
航空評論家のサムドゥラ・スカルディ氏は「デモ飛行は機体の大小にかかわらず、ジャカルタから(スマトラ島とジャワ島の間のスンダ海峡の)アナック・クラカタウ方面など海上で行うのが通例だ」と指摘。「今回、なぜ悪天候で事故が多発しているボゴール山間部を通過するルートを選び、運輸省などが許可を出したのか」と述べ、諸手続の過程を調査する必要があると強調した。
SSJ100はロシアのスホイ社が製造する小型旅客機。旅客数は最多で百人程度。機長はパイロットのアレクサンダー・ヤブロンツェフさん(五七)。AFP通信によると、「飛行経験が豊富な、SSJ100の一流テストパイロット」だという。
デモ飛行はスホイ社が開催するアジアツアーの一環。アジアでの受注を促進するため、ミャンマー、パキスタン、カザフスタンの後にインドネシアを訪れた。