空軍機の派遣準備が完了 武漢の自国民避難へ

 新型コロナウイルスによる肺炎の感染が拡大する問題を受け、インドネシア政府は29日、発生源となった湖北省武漢市周辺に滞在するインドネシア国民を避難させるため、空軍機を現地に派遣する最終準備を整えた。2期目に入ったジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)政権として、自国民保護の姿勢を目に見える形で内外に示すことになる。
 地元ニュースサイトのドゥティックコムが伝えたところによると、空軍は2機のボーイング737とC130輸送機の計3機の出動準備を完了させた。派遣任務は政府内で行った関係省庁との調整を踏まえた措置という。
 しかし、中国は新型肺炎の拡大阻止が目的として、武漢から離れる航空機の受け入れを厳しく制限。武漢空港が実質的に閉鎖状態にある中、自国民を避難させるチャーター便の受け入れ要請は、日本など各国から殺到している状況にある。
 このため、インドネシア政府としては外交ルートなどを通じ、インドネシア空軍機の離発着を許可するよう中国側に強く求めていく必要があり、空軍に出動命令を出すには、なお時間がかかりそうだ。
 空軍は29日現在、武漢からの離脱を希望しているインドネシア国民は100~200人と想定。予定通り3機が武漢入りできれば、1回のフライトで全員を帰国させることができるとしている。
 機内には感染者の搭乗にも対応するため、救護班を乗り込ませ、また医療機器を持ち込む用意も整えて、24時間体制で政府の最終決定を待っているという。
 新型肺炎をめぐっては、検疫当局が国内各空港で厳重な水際対策を強いられているが、中国の初動対応のまずさが感染の拡大を助長したとの指摘がインドネシアでもでている。
 時事問題を取り上げるテレビの討論番組などでも、有識者が「共産党による一党独裁体制が持つ、都合の悪いことはもみ消すという隠蔽(いんぺい)体質を直視すべき」などと批判。新型肺炎をめぐる問題は、複雑な対中感情を持つインドネシアの世論にも少なからず影響を与えることになりそうだ。(長谷川周人)

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