EUをWTO提訴 パーム油規制で インドネシア
インドネシア商業省は15日、欧州連合(EU)によるパーム油に対する輸入規制について、世界貿易機関(WTO)に提訴したと発表した。環境対応を進めるEUと、輸入規制を「差別的で貿易障壁」として反発するインドネシアとの交渉は平行線をたどっており、インドネシアは他の産出国と連携して正当性をアピールする。
EUは地球規模の持続可能性の観点から2015年に採択された「パリ協定」に基づき、30年までに温室効果ガス排出量を40%削減(1990年比)する目標を掲げている。また、パーム農園開発・運営が森林破壊につながるという視点から、自動車用のパーム油由来のバイオ燃料使用を徐々に減らしていき、輸入については2030年までに禁止する方針を示している。
インドネシアはEUとの貿易では、パーム油輸出により稼ぎ収支を安定させてきた。輸入規制について、16年ごろからEUと交渉してきたが、思うように進まなかった。EU側がことし8月、インドネシア産のパーム由来バイオ燃料に8~18%の範囲で反ダンピング(不当廉売)関税を課すと決定したことを受けて、態度を硬化させた。
アグス・スパルマント商業相は輸出規制について「世界貿易でのパーム油製品のイメージを傷つけるだろう」と語り、毅然とした態度をとる必要性を示す。パーム産業への依存度が高いマレーシアと連携しつつ、EU側に報復関税を課していく姿勢を隠さない。
また、パーム油の国内使用を進め石油輸入を減らす狙いから、国産バイオ燃料を混合させたディーゼル燃料普及を目指す。
EUとインドネシアは16年から自由貿易協定(FTA)交渉を進めてきた。しかしことし11月、EUはインドネシアによるニッケル鉱石などへの輸出制限について、WTOに提訴。関税合戦や双方による提訴の動きは、自由貿易構想の挫折につながりうる。(平野慧)