日イ総合防災研究が終了 地震、津波、火山分野で成果 行政への活用が課題

 日イの地震、津波、火山の専門家が参加し、二〇〇九年から行われた日イ共同の研究プロジェクトが今月で三年間の研究期間を終える。防災に関する第一線の専門家総勢二百四十人が参加した同プロジェクトでは、期間中にパダン沖地震、ムラピ山噴火などインドネシアで多くの災害が発生し、その都度、日本の専門家が被災地に出向き共同で調査、分析するなどの連携を図った。東日本大震災後にはインドネシアの専門家が東北の被災地を視察。日本の被災経験を無駄にせずインドネシアに役立てようとしている。

 プロジェクト「インドネシアにおける地震火山の総合防災策」は科学技術振興機構(JST)と国際協力機構(JICA)が共同で予算を拠出した。日本側からは東大、京大など約三十の日本の大学、組織から約百四十人が、インドネシア側からはインドネシア科学院(LIPI)や科学技術応用評価庁(BPPT)、研究技術担当国務相事務所、国家災害対策庁(BNPB)など約二十の大学や研究機関などから約百人が参加。研究分野は地震や津波、火山以外にも、災害から逃げる人の心理や、防災教育を広めるための効果的な手法など包括的な防災研究が行われた。
 一日に中央ジャカルタ・チキニのLIPIでプロジェクトの最終報告会があり、日本から約二十人の研究者が参加。期間中に行われた調査の内容などを報告した。報告会の前日には中央ジャカルタのBPPTでプロジェクトの慰労会が行われ、鹿取克章・駐インドネシア日本大使、グスティ・ムハンマド・ハッタ研究技術担当国務相らが出席し、日イ研究者らを激励した。
 日本側の研究代表者を務めた東大地震研究所の佐竹健治教授は、多くの研究者が参加し、地震や津波、火山などの災害の研究をすることについて「まずは調査、研究で災害のことを把握しないと、どのような対策をとるべきかが分からない。研究後は、結果をどのように防災行政に反映させるかが重要」と説明。「インドネシアでの課題は、日本と同様に防災分野に関係する省庁がさまざまな組織にまたがっていること」と話し、「その中で研究の成果を話し合い、防災行政に役立てるようにする仕組みを作ろうとの機運も高まってきている」と話した。
 東日本大震災後一年の今年三月には、プロジェクトに参加するBPPTの研究者や研究技術担当国務相事務所、BNPBなどの職員が訪日。文部科学省の地震調査研究推進本部や内閣府の中央防災会議が、インドネシアと同様の縦割り行政の中で、専門家の調査や研究の成果を関係機関に提供する役割などを果たしている状況を視察した。職員らは日本と同じような仕組みを作ることに前向きになっているという。
 佐竹教授は研究の成果について「津波の分野では、プロジェクトなどで行われたアチェでの地質調査で、十四、十五世紀にも二〇〇四年の大津波と同様の規模の津波があったことを示す痕跡が見つかった。災害の危険性を伝える上で過去に災害が起きたことが分かるのは重要なこと」と説明。「三年間のプロジェクト中にパダン沖地震、ムラピ山噴火、ムンタワイ津波、東日本大震災など多くの災害があったが、迅速に日イの研究者が協力し、情報を交換したり、現地調査を行ったりすることができた」と振り返り、「今後も両国の各分野の研究者はプロジェクトで得られた関係を継続、災害があったときなどは協力を続けていく」と話した。
 プロジェクトで使われた地震計などの機材はインドネシア側に供与され、今後も研究に活用される。

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