成長路線維持 財政出動へ 経済減速に対応 政府・中銀
米中貿易摩擦などの影響を受けて経済成長が減速する中、政府は財政出動策に舵を切る。近年抑制傾向だった財政赤字の対国内総生産(GDP)比率上昇を、一定の割合まで許容する。積極的な金融緩和策と並行して、経済成長を下支えする施策を打ち出し、投資意欲の維持、上昇を目指す。
財務省によると、スリ・ムルヤニ財務相やペリー・ワルジヨ中央銀行総裁は10月31日に開かれた企業の経営者が集まったイベントなどを通じて、経済成長を続けるための方策を示した。
その中で、2020年予算で1・76%を目標としていた財政赤字のGDP比について、2・2%程度までの上昇を許容する方針を示した。
インドネシアではアジア通貨危機の反省などを踏まえて03年に定められた国家財政法により、財政規律を重視して財政赤字をGDPの3%以内に抑えることが義務付けられている。
近年は緊縮財政路線を進め、格付け機関の評価も高めてきた。
しかし、19年に入り世界経済の停滞を受けて、インドネシアの貿易も低調に陥っている。個人消費は底堅さを維持しているが、不動産や自動車などの販売状況は鈍い。各国際機関によると、経済成長率は5〜5・1%程度にとどまるとされる。
経済の減速により、ことしは歳入が目標に対して100兆ルピア以上不足する可能性があり、財務省は財政赤字が若干拡大する可能性を示唆してきた。
インフラ部門などへの民間投資が持ち直す機運もあり、政府はことしから来年にかけて、景気を冷やさないために「財政出動も止むなし」と判断した。
ただ、財政赤字と経常赤字の「双子の赤字」を抱える中での支出拡大はリスクも伴う。通貨の大きな下落や証券投資意欲の減退を招かないような舵取りが求められる。
中銀のペリー総裁は、利上げなどの金融政策を迅速に行っていく姿勢も改めて表明した。
政府・中銀は、企業への税制優遇などの投資意欲増進策にも注力する方針を示した。(平野慧)