18年に新規確認 ハンセン病患者1万7000人 各地に元患者・家族の村
インドネシアでハンセン病が、世界保健機関(WHO)が定める「公衆衛生上の問題としての制圧(人口1万人当たりの患者数が1人未満)」を国レベルで達成してから2020年で20年の節目を迎える。しかしWHOによると、同国では18年に1万7017人が新たにハンセン病と診断された。新規患者数は10年前からほぼ横ばいのまま。インド、ブラジルに次いで世界第3位となっている。
広いインドネシアには、高い有病率を抱えるホットスポットがあるとみられる。感染力は低いが、診断された時点で発病から時間がたっているため、治癒した後も外見的な障がいを抱えている人も少なくない。
現在は治療法が確立している。しかし、感染力が強いとの誤解や、遺伝病との誤った知識、過去の悪行による業病などとの偏見から、元患者や、その家族への差別は続いている。
差別や偏見から逃れるため、患者・元患者やその家族が集まってできた村は、現在もインドネシア各地に存在する。
バンテン州タンゲラン市のシタナラ・ドクター病院の裏。地元の人に「カンプン・クスタ(ハンセン病の村)」と呼ばれている村を30日、記者が訪ねた。
ハンセン病専門だった同病院に治療に訪れた人たちが、完治した後に寄り集まってできた村だ。現在も、元患者やその子ども、孫の3世代を含む、計1千世帯が暮らしている。
スハルトさん(65)は、この村で暮らしている元患者の一人だ。足に傷ができたり、腕の皮膚をつねったりしても全く痛みを感じず、発病に気がついた。31歳の時に治療のため、東ジャワ州クディリの家族の元を離れ、同病院で治療を受けた。薬を飲んで病は完治したが、右足を切断した。
「右足がない体でこの村の外を歩くのは今でも恥ずかしい。この村には同じ境遇の仲間がたくさんいる。同じく元患者の妻とここで出会って結婚し、今は毎日幸せ」と笑った。
啓発活動の成果によって、少しずつではあるが正しい知識が普及し、以前のようにあからさまな差別を受けることは少なくなった。以前は外から村に入ってくる人はいなかったが、今では村の中の学校や、モスク、お店に通う人も多いという。
「ハンセン病は薬を飲めば治る病気。ここに住んでいる人は、もうみんな完治している。私も足がないだけで、普通の人と同じ」と話し、義足をつけて歩いて見せてくれた。(小山倫、写真も)