仮設住宅、工夫凝らし 中部スラウェシ 日本NGO支援
昨年9月28日、4800人以上の死者・行方不明者を出した中部スラウェシ地震・津波の被災地で、約1年間、仮設住宅の建設を支援してきた日本の非政府組織(NGO)に現状を取材した。支援の結果、高齢者用スロープ付きの住宅や、メンタルケア目的のカラフルな住宅などが増えたが、行政と国際赤十字・赤新月社連盟などの資料によると、まだ必要数の4割・1万3000以上の住宅が不足しているという。
NGOの一つ、ピースウィンズ・ジャパンの本田佳織さん(28)は昨年10月から被災地での緊急支援事業に参加。ことし1月の同事業の終了後も、「まだできることがある。支援は足りていない」と滞在延長を決め、パル市トンドで160世帯分の仮設住宅の建設、運営などを支援してきた。
建設では、子どもや高齢者に配慮して入り口にスロープを設けたり、蚊の侵入防止のため窓に網戸を設けるなど工夫を凝らした。4月の仮設住宅の受け入れ開始以降、電気代の支払い配分をめぐる住民間のトラブルもあったが、最近は平穏だという。
同様に昨年10月から活動を続けるパルシックは、シギ県で仮設住宅の建設を支援し、現在までに206戸を建設した。現地で活動するインドネシアの提携NGOの意向に合わせ、住民のメンタルケアを目的に様々な色の塗料を提供、これを使って住民自身が塗装したカラフルな仮設住宅が特徴となっている。
約1年間滞在するパルシックのプロジェクトマネージャーの飯田彰さん(48)は、「現地を訪れ、住民が実際に(自分たちの援助した仮設住宅で)生活しているのを見ると本当にうれしい」と話した。震災で自宅が損壊したセハニさん(67)は、テント暮らしなどを経て、支援による赤い仮設住宅で暮らす。「やっと落ち着ける場所が出来た。かわいい家で気に入っている」と笑顔で語った。
27日に発表された同資料によると、パル市、シギ県、ドンガラ県で被害を受けた家屋は9万4362戸。仮設住宅の必要総数は3万3265戸だが、提供されたのは1万9648戸で、まだ1万3617戸が不足している。特に4万2864戸が被害を受けたパル市での不足分は7698戸で、必要数の6割が足りていない状態という。(大野航太郎、写真も)