「建物の波が襲った」 液状化、驚異の破壊力 パル市バラロア

 「建物の波が押し寄せてきた」。スラウェシ島地震で起きた液状化現象が襲った中部スラウェシ州パル市のバラロア国営住宅地。住民らが常識を超える体験を語った。高台にあった同住宅地を3日に訪れると、南北800メートル、東西300メートルにわたり、1747棟(国家防災庁まとめ)とされる家々がほぼがれきの山と化しており、直径数メートルの陥没が生じるなど、大規模な砲撃を受けたような惨状を呈していた。

 同住宅地での死者はこれまでに33人とされているが、捜索が進むにつれ、桁違いの犠牲者が確認される恐れがある。驚異的な破壊力を目の前にし、自分が持っていた「液状化」のイメージは、根本から見直しを迫られた。
 住宅地の丘を登り始めると、ひっくり返った車や、建物が目に入った。にわかに信じられず、会う人ごとに「これは本当に揺れによる被害か。津波の跡のように見えるが」と、同じ質問を繰り返した。
 住民のWi—Fi技師イパルさん(22)が「ここは大通りだった」と話す。巨大な住宅解体現場にしか見えない。
 「地震が起きたとき、マグリブ(日没時の祈り)の時間だった。祈りの呼び掛けと、『逃げろ』『外に出て』という大声が入り交じった。激しい揺れで家が崩れ、建物の波が押し寄せてきた」
 イパルさんは「私の親族15人が犠牲になった。母、きょうだい、おじ、おば……。ここでの犠牲者は千人以上いるだろう」と声を落とす。
 住民のアンディ・ムサファさん(58)が「あそこにムショラ(イスラムの礼拝所)が見えるだろう。元はこっちにあったんだ」と、傾いたムショラの屋根から100メートル以上離れた所を指さした。
 「激しい横揺れがあり、建物が土地に沈み、道路が陥没した。私は家の屋根に上り、助かった」
 焼け焦げたトタンや、白いコンクリートが、熱帯の日光を反射し、全身から汗が噴き出す。地面には、ハローキティの絵があるマットレス、携帯電話の画面、ヘルメット、ハンドバッグなど。地震の瞬間まで続いていた日常生活の時間が、そこだけ止まっていた。
 住宅地近くの道端で、住民や被災地救援のボランティアから、日本の地震で起きた液状化現象について次々と聞かれた。近所の主婦エカさん(32)は「住宅地がある場所は昔は沼地だった。お役所はこれほど強い地震が起きるとは考えてなかったのでは」と話した。
 道には7人分の遺体袋が並んでいた。漂う異臭に、マスクを強く鼻に当てた。救助隊員がつぶやいた。「1人は赤ん坊、妊婦や子どももいるんだ」(米元文秋、写真も)

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