首都移転を正式表明 カリマンタン島に決定 大統領国家演説

 ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領は16日、中央ジャカルタの国民協議会(MPR)で、国会(DPR)、地方代表議会(DPD)議員を前に、施政方針演説に当たる「国家演説」を行った。首都をジャカルタからカリマンタン島に移転する方針を正式に表明した。ジャカルタ近郊の過密緩和や地方発展の促進などが目的だが、巨額の費用の調達方法や大枠の計画策定など課題は山積しており、実現可能な「新首都」の将来像を模索する状態が続いている。

 ジョコウィ大統領は演説の中で「新首都は国民のアイデンティティーの象徴であるだけでなく、国家の進歩を表す」と語った。再生可能エネルギーを利用した「近代的、スマート、グリーンシティー」をコンセプトに据えた。目的は「平等や正しい形の経済的繁栄の実現のためだ」として、国会議員に対して承認と協力を求める考えを示した。
 カリマンタン島内の移転先については、これまで複数取り沙汰されてきたが、具体的な場所は明らかにされなかった。
 移転は4月29日の閣議で決定した。大統領はジャワ島外で今後の発展が見込め、地震災害が少ないカリマンタン島を有力視。5月に候補として東カリマンタン、中部カリマンタン州を視察した。
 2021年から建設を開始し、24年から政府機能などの移転を段階的に進めていく。完了はインドネシア独立100年を迎える45年を目指す。
 首都移転計画はスカルノ初代大統領時代から、広大な国土の統治強化策として浮上しては、予算面の課題や実業界、政治家の反対により前に進んでこなかった経緯がある。
 ジャカルタを中心とするジャワ島に人口や産業が偏在している状況は、数十年来の課題だ。国内の経済格差を縮小し、お金の流れを活性化することなどを目的にした首都移転・機能分散は経済発展に向けてプラスに作用する。就任以来、一貫して離島開発を唱えてきたジョコウィ大統領の熱意は強い。

 ■民間資金活用も
 課題となるのは費用と、大枠の開発計画だ。国家開発企画省(バペナス)は当初、首都移転費用として323兆~466兆ルピアが必要という概算を示していたが、政府内にも異論があり縮小させる考えも見せている。移す対象となる首都機能の範囲や想定する人口規模などと併せて、開発計画に関する有識者たちの議論が続いている。2020年の国家予算では、明確に「首都移転」向けであることをうたった予算は拠出されていない段階だ。
 カリマンタンの未開発地域を開き、建物を建て、道路を敷き、橋をかけるとなると、大規模なインフラ投資が必要だ。国家予算だけでは賄えないのは確実で、政府予算を使わない融資手法(PINA)の活用など、手段を模索していく。具体的な計画が見えてきた後、投資活性化策を打ち出していく方向性だという。
 与党多数の国会内でも根強い反対はある。福祉正義党(PKS)」のマルダニ・アリ・セラ党中央幹部委員長は16日、じゃかるた新聞などの取材に対し「移転には膨大な政府支出が必要だ。国家債務や失業、貧困などの状態を考慮して、国民にかかる経済的負担の問題も考える必要がある」と懸念点を指摘。「平等な開発の実現のためには首都移転だけではなく、地方に経済産業の中心地を作ることを考えるべきだ」と慎重に議論していく考えを示した。(平野慧)

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